Arts Calendar/Art's Report site/《Sumitani World》Depero Futuristic Art
東京都庭園美術館
デペロの未来派芸術展−20世紀イタリア・デザインの源流−
あっという間に桜が散ってしまって、街角の花ミズキの白い花びらがまぶしい季節になりました。目黒にある東京都庭園美術館にでかけてきました。門をくぐって建物正面までのアプローチ、雨上がりの緑がほんとに輝くばかり。あまりまとまって見る機会が少ないと思うのですが、20世紀初頭の芸術運動のひとつ、未来派の展覧会が開かれています。フォルトゥナート・デペロ(Fortunato Depero/1892-1960) にスポットライトを当てたこの展覧会、「20世紀イタリア・デザインの源流」というタイトルがついています。
未来派の誕生は1909年。機械時代の新しい美を説く詩人マリネッティの「未来派創立宣言」はなんとも激しく情熱的です。「われわれは危険なる物への愛を歌うであろう。・・・われわれは、この世の輝きが速度の美という新しい美によっていっそう豊かなものになったことを宣言する。」
この宣言がただちに画家たちのあいだで共感をよび、機械文明の勝利を造形表現の上でも確認しようとする動きが生まれました。絵画や彫刻だけでなく、演劇、音楽、文学、映画、建築など、その活動の領域は幅広いもの。「機械と速度とダイナミズム」が未来派のキーワードということです。
デペロはこの未来派の第二世代を代表し、今日のイタリアデザインの方向性に大きな影響を与えた人物、と紹介されています。情熱的で過激な作品をイメージしながら展覧会場に足を踏み入れると、びっくり。まるでおもちゃばこをひっくり返したようなにぎやかさ。絵画、木製の玩具のような立体、マリオネット演劇のアイディア模型、舞台美術・衣装のデザイン、タペストリー、広告などの商業デザインなどなど、お祭り気分の明るさが充満してなんとも楽しい!マリオネットの展示のコーナーに流れている不思議なBGM「雑音による音楽」(ルイジ・ルッソロ)も難解な前衛というよりはどこかユーモラスな響きです。
興味深かったのが舞台美術や衣装のデザイン。同時代のロシア・アヴァンギャルドが繰り広げた舞台芸術の世界と共通してるものを感じて、年譜を丹念に拾ってみることにしました。やっぱり。1910年代に、実現はしなかったものの、ロシアのディアギレフ・バレエ団から舞台美術制作の依頼を受けた、という一行があります。
同じイタリア未来派のジャコモ・バルラが舞台を制作した「花火」を、ディアギレフ・バレエ団がローマで上演したという記録と、この舞台の復元写真を古い雑誌から見つけ出しました。なんて不思議な舞台!光を仕込んだ透明な素材の幾何学的な立体を舞台に置いて、花火に見立てたその照明をバルラとディアギレフが操作した、というのです。ダンサーが登場しないバレエの公演です。当時の未来派とロシア・アヴァンギャルドが結び付いて生まれた奇想天外な舞台空間は、祝祭的なおおらかさと、シリアスを装った不真面目さを漂わせていて、それはこのなんとも楽しく不思議な魅力にあふれたデペロ展の空間とよく似ている気がします。
カンパリ社の広告デザインや、「ヴォーグ」誌の表紙デザインなども現代に通じるモダンな雰囲気のものばかり。パンフレットには「この奇才の全貌を一挙に紹介する日本で初めての試みです」とあります。掘り出し物を見つけた気分!
「デペロの未来派芸術展−20世紀イタリア・デザインの源流」は5月23日まで。
(東京都庭園美術館テレホンサービス:03-3443-8500)
Apr. 29, 2000 Sumitani
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