Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》scandinavian connection 2002 August
vol.92
scandinavian connection 2002 August
2002年8月6日
東京・南青山Body & Soul
ラーシュ・ヤンソン(Pf)
アンダーシュ・シェルベリ(Drs)
森 泰人(B)
オーヴェ・インゲマールソン(T-Sax)
今年一番の暑さを日々更新する8月初め。にもかかわらず、森さんたちは涼しい顔で演奏してる。スウェーデンから来ると、この暑さも熱帯のリゾートに感じられるんでしょうか。メンバーは、「スカンジナビアン・コネクション・トリオ」として定着したラーシュ・ヤンソン、アンダーシュ・シェルベリ、森さんの3人に、昨年のボーヒュスレーン・ビッグバンドでも来日したオーヴェ・インゲマールソン。
大人になってからは、早く通り過ぎることを願うばかりの夏だが、子供の頃は夏休みの恩恵を存分に楽しんだ季節だった。パワーも色彩も他の時季に比べると圧倒的な強さの夏。陽射し、ひまわり、花火、雷、夕立ち、お祭り、波、山の色。。。中でも夏の夜は、何やら不思議で、ドキドキするような、独特の色彩を持つ時間だった。特別の行事があったわけではないけど、その深い群青の夜空や涼しくなった風に子供心にも「せつなさ」を感じた。真夏の夜の夢。夏休みの思い出を取り出し、噛みしめ、「夏っていい季節だったんだな」と思い出させてくれるライブになった。真夏の夜のジャズ。
華奢なオーヴェ・インゲマールソン。優しげな雰囲気を持つ人だけれど、森さんによると「演奏をするとすごい!」。ステージに立っても借り物みたいに、所在なげな様子。昨年のビッグバンドのライブで聴いてるはずだけど、ちょっと思い出せず。ところが、音を聴いて「わかりました!」。
つややかに滔々と流れる音。どこまでもまっすぐにクリアで気高ささえ感じる。ビッグバンドの中でも突出した音を出していたのは、この人だったんだ。マイケル・ブレッカーに似たサックス。ということだけど、そこからアクを取り出して、月光をブレンドという感じ。スタンダードで、何気なく耳に馴染むけど、グイグイと引き込まれる引力の強いサックス。超絶技巧な演奏も、さらりと涼しくこなしてしまう。
アンダーシュのドラム、ハイハットからは絶えまなく、せせらぎのようなさらさらとした音。バスドラは波のリズムに他のプレーヤーを乗せ、波間を滑ったりくぐったり。暑いからこその楽しみといえば、水。プールでバシャバシャ暴れ、夕立ちに追い掛けられながら自転車を飛ばす。夏と水の組み合せは、今の夏も待ち遠しい。そんな気分をジャズクラブで、感じさせてくれたのがアンダーシュ。水際で遊んだり、滝つぼ近くの飛沫に涼んだり。遠雷のドキドキ感。思わず歓声をあげたくなる雷雨の迫力。ダイナミックで表情豊かな彼のドラムは、「スカンジナビアン・コネクション」で聴いた何人かのドラマーの中でも特に好きなもの。ダイレクトに体に響くリズムと心に届くスイングとフレーズ感が気持ちのいい熱さにしてくれる。
やっぱり暑かったのか、ラーシュは、いつものお茶目さが感じられなかったけど、丁寧に築かれる音の重なりが、キラキラとして、「もうすぐペルセウス流星群」なんてことを思い出す。そういえば、夏に聴くことが多いせいか、ラーシュのイメージには夏が重なる。夏にキラキラするもの、それを並べてみるとラーシュのフレーズが生まれてくるようだ。水飛沫、蛍、線香花火、木漏れ日、流れ星…。
どれも綺麗だけど弱々しく、いまひとつイメージに合わないが、それに強く陰影をつけるスパイスが森さんのベース。この日は特にスパイシーな音でライブがしゃきっとした気がする。かき鳴らすといった風で、ものすごくパワフルなベースだったのだけど、ドラム、サックスのステージから洪水のように押し寄せる迫力をいったん引き受けて、大きな打上げ花火にまとめて客席にみせてくれたような。窓越しに見るだけでは物足りなく、音だけではもどかしい打上げ花火。夜空にぱぁっと開く大輪の花。それだけでもいいけど、やはりお腹に響く「どーん」がなければ花火じゃない。この「どーん」が森さんのベース。
Body&Soulがなんだか花火見物の会場のようだった。というと雰囲気が壊れてしまうかもしれないけど。暗くなってからの外出に、盛り上がるテンション。打ち上げられるまでの騒がしさ。ひとつめがあがる時のひゅーという音の気配。それで一瞬静まり返り、開く花火と続く「どーん」に一気にボルテージがあがる。間合いをおいた単色の大輪に溜息をつき、押し寄せるような迫力のスターマインには拍手と歓声。夜中まではしゃぎ倒した子供の夏の夜。
2002年8月6日 Body&Soulにて。