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vol.85

ライブ・レポート

2002年3月20日
「コジ・カナ・ツル&塩次伸二」
東京・高円寺「JIROKICHI」

ピアノ:小島良喜
ベース:金沢英明
ドラム:鶴谷智生
ギター:塩次伸二

ライブを聴いていて、特にドラマーに「音が端正である」というのは、褒め言葉にはならないのだろうか?いつもは、ドラムセットがよく見える場所で、しなやかに舞う腕の動きも楽しみなのだけど、まったく姿の見えない席で、音を聴くことに集中していたら、そんなことを考えていた。

「コジ・カナ・ツル」というトリオは、ブルースだとずっと思い込んでいて、「鶴谷さんのドラム好きなんだけどぉ、ブルースは苦手で」ライブは二の足を踏んでいたという状態。でも一度くらいは聴きに行こうと、行ってみたらば、ジャズだったわけだ。そう言い切ってしまえるほど、カテゴリーに組み込まれている印象は薄く、ブルースの要素もたっぷりある。それはシュガーレス、渋すぎもしない後味のすっきりしたブラックコーヒーのような、地に足のついた聴き心地のよいトリオだ。時にエスプレッソのようにとろっとするほど濃い一杯もはさみつつ、というライブ。前回のライブには、ブルースハープの八木のぶおが加わり、今回はギターの塩次伸二がゲスト。そのゲストがトリオの雰囲気を様々に変えているようだ。カップを気分で選んで、コーヒーの味わいの変化を楽しむように。

ピアノもベースも、ものすごく甘くリリカルなジャズにもなりそうな穏やかな音だけど、一貫して男っぽい。甘さはあるけど、甘えのない音、なのだろうか。潔さが気持ちいい。(聴いてるほうがこっぱずかしくなるようなジャズは苦手だ。)ギターの多彩な音も面白い。バイオリンのように聴こえるフレーズなど、手品のような不思議さは、楽器も手元も見えなかっただけに、純粋に楽しめたのかも知れない。聴いているはずが、いかに目に頼っていたか。

「端正」という言葉で表現できる楽器はたくさんある。が、ドラムを表現するには、面白みがないとか単調だということを遠回しにいっているようなものだ。だけど、鶴谷智生のドラムには、やはり「端正」という言葉を使いたいと思う。ソロで何時間も聴かせられるような、骨と筋肉がしっかりしたうえに、花が咲いているようなドラムだ。ピアノトリオもやるし、ハードな野獣系のバンドもやる。女性ボーカルのバックもあり、1時間弱のインプロビゼーションで叩き通すこともある。好きなドラマーだから、つい集中して主役として見てしまうのだけど、一歩ひいて見れば、他のミュージシャンを気持ちよく乗せ、運ぶことのうまい人だと思う。

ドラムセットから符尾のようなラインが弾かれ垂直に飛び出してくる。どこまでいってもラインは屹立したままだ。ピアノやベースが絡んでも、決してそっちに歪んだり曲がったりすることはない。孤高ではなく、他の音符を取り囲み、持ち上げ、弾ませたりする。針葉樹の幹のように有機的でもある。シンバルやバスドラ、スティック、ブラッシと発せられる音により、ラインは炭のように黒々と太くもなり、ナイフの軌跡のように飛び出したりもする。そしてそのラインは必ず上昇し、決して下に落ちることはない。

2002年3月20日


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