Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》sclap
vol.94
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2002年9月28日 東京・高円寺JIROKICHI 白井良明(Gt) バカボン鈴木(B) 鶴谷智生(Drs) エフェクターやらシンセサイザーやら使った環境音楽が整備されすぎた庭園だとすれば、sclapは、手つかずの秘境か、さもなくば自然と一体化した遺跡か。いずれにせよ、様式化されていない美。「時間」という美の制作過程に対抗するには、スクラップにする、という強硬手段しか人間は太刀打ちできないのか。なんて考えてしまうデカダンな雰囲気も合わせ持つのは、懐かしい曲をコラージュして、変型させて、キュビズムも味わえたりするから、か。 エレキギター、エレキベースにドラムのトリオ。バンド名「sclap=スクラップ」なんだけど、メンバー3名それぞれ音が綺麗すぎ。すべての音を楽譜にしたら、真っ黒な固まりがあるだけになりそうだが、毛足の詰まったベルベットみたいにしなやかなトリオだ。ジャンルに入れるとしたら、プログレ・ロックってことになるんだろうか?でも、難しいテクニック満載、手数が多ければいい、という枠を超えた、とても透明度の高いプログレだと思う。 sclapは、わざと違和感のあるものを聴かせたかったのかと思わなくもないけど、3人とも音がきれいという点で、それは失敗…か?聴く側にとっては、まったくのストレスフリー。それどころか、大音量に大迫力の瀑布のようなステージは、マイナスイオン発生してるくらい心地よい。そして、だんだんとアコースティックを聴いているかのように、トリップ。 白井良明=ムーンライダーズ。で、えーと。。。という程度しか知らなかった白井良明。sclapのライブでは、エレキギター50年史が甦るようなギターが聴ける。テケテケテケ…からフォーク、ツェッペリン、アコースティックギターでゴンチチっぽかったり(ベースとドラムはゴンチチっぽくない)と。どれもが、緩みや隙がまったくない。なければないで、面白味もなくなりそうだが、その分、厚みや渋みっていうのがある。それを味っていうほどジジくさくなどないギター。えっ?と声に出してしまいそうな、音の磨かれっぷりに感動したりする。 「サーフ・ジャズ」と名付けられた「パイプライン」「ダイヤモンドヘッド」や「渚でニトロ」を加工した曲は、ジャズというには、かなりハード。オリジナルを今聴くと、そのスカスカに物足りなさを通り越したものを感じるけど、sclapでは、こっちのほうがオリジナルかというほどに、ハマってる。みっちりと音が詰め込まれたうえにグルーブが突っ走ってる。ベンチャーズはギター2本だったと思うけど、トリオでやってこれだけ濃密になるんだ。ベンチャーズやサーフ・トリップ、当時はこのsclapくらいエキサイティングに聴こえたんだろうなぁ。 バカボン鈴木の「ストリキーネ」「クーデター」と物騒なタイトルの曲も並ぶ。ムーディなプログレ「ムード・プログレ」と名前がついたそうだ。タイトルや出で立ちはエキセントリックだけど、ベースの演奏は滋味あふれるっていうんだろうか。地味じゃなくて滋味。エレキベースの骨太の深い音。手堅いベースは、無意識のなかで、時折、覚醒を誘うようにはっきりと耳に届き、目と耳がそちらに奪われる。ベースだけしか聴こえていない一瞬を感じることがある。 スティックベースというネックだけを長く伸ばしたような多弦のベースのとろ〜とした濃い音、オルガンかコントラバスを弓で弾いたような、音を長く長く伸ばす奏法(これは初めて見て聴いてびっくり)、とほかでは聴けないベースもおもしろい。でもやっぱり普通のベースで普通に演奏して、穏やかそうでいて、それだけではないベースは、ストリキーネよりはトランキライザーの効き目が大きいと思う。 JIROKICHIではいつもお店のドラムを使うのだけど、sclapでは、持ち込みのドラムセット(かなり重量)の鶴谷智生。WADA Mapで前に書いたドラマーだ。いろんなバンド、セッションのなかでも、sclapは、ハードなドラムという点で1、2かと思う。きっちりリズムをキープしつつ、ゲームメーカーとしてメンバーを動かして、また自分の音もしっかりと効かせる。後ろにいる、前に出るを自在に行き来する。真上からドラムというライトを浴びせている、というほうが合ってるかも知れない。体に届く音だから、太陽光か。そうそう、遺跡をアートに彩るのは、太陽の演出にしかできないことかも(D.C.)。色彩や光度で、ライブハウス全体を演出してるみたいだ。ソロの時だけでなくても、ドラムソロやってるみたいな演奏がずっと続く。後味が潔く、いろんな表情のドラムを聴かせてくれるので、いくら聴いてもオーバーフローしない。 曲と曲のインターバル、MCが少なく、サクサクと進んだライブ。演奏とのギャップが面白い緩いボーカル(失礼!)が入る曲もあり。曲数はかなりだったと思うけど、飽きずにまだまだ聴きたいという気持ち。 2002年9月28日 |