Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》TNM0203
vol.87
劇団トリのマーク(通称)公演
「蔦にはまた蔦の別の夢」
2002年3月31日
東京・新大久保@東京グローブ座
7月いっぱいで休館となってしまうグローブ座で、おそらく現状の劇場での「トリのマーク(通称)」の公演は、これが最後になるのだろう。「劇場」+「棲み家」にまつわる話が、グローブ座へのオマージュのように感じられた。
開場から開演までの時間、なにかしらの趣向、仕掛けがあるのを期待して、開場時刻より早く劇場につくと「もう開場していますので」と。場内に入ると無人。薄暗くだーれもいない舞台と客席。人の気配がまったく感じられずに空気は落ち着いてしまっている。
指定席に向かう途中、すべての座席のナンバープレートの上には、「子供部屋」「納戸」「落とし穴」などと縫い付けてあるのを見つける。ドアの脇に、後ろのほうの座席に、何やら、ある。受付でもらった「お楽しみマップ」によると、それが今回のお楽しみらしい。
カエルのぬいぐるみ、ブタのぬいぐるみ、注いでる途中のティーポットとカップ、目玉つきの貝が座席にある。階段の脇には人工芝製の蕨?、踊り場には小さな釣り人。2階のロビーには出月画伯による水彩画展。3階には、メキシコの部屋と演奏室。カリンバで遊ぶ。お楽しみを探しながら、ふだん覗くことの少ない「自分と関係ない場所」を確認して歩く。廊下に貼ってあるパンチングボードには、「トリのマーク」やあしあと、人の顔、蔦の葉が、丸めた紙を埋め込んで描かれている。
舞台の上には何もない。セットが組んであったり、大道具があったら、逆に驚くだろうな、「トリ」の場合。そして、上手から登場なんて定石もない。客席通路から、大家=出月勝彦と借家(予定)人=山中正哉が話しながら現れる。「ここを寝室に、この辺を子供部屋に使ってください」と客席を示しながら、家を借りにきた人に間取りを説明する大家であるが、ここは見立てではなく、そのまま「使われなくなった劇場」であるらしい。寝室や子供部屋は劇場になる前の家の間取り。
二人が話していると、舞台上のバルコニーから緑色の衣装の柳澤明子が覗いている。それに気付いた山中正哉が見上げると「なんだよぉー、見るなよぉー。。。閉めるよぉー」とおびえたように言い、姿を消してしまう。ハイテンションの自称隣の住人=丹保あずさが現れる。劇場について、大家について、あれこれ言うが、どうやら、ここは「出る」らしい。椅子をあちこちに持っていく小動物のような櫻井拓見も怪しい。彼等を見ても、それほど動じない山中正哉に対して、あからさまに見ないフリの出月勝彦。舞台の上だけでなく、客席、2階席、バルコニー、すっぽんなど、グローブ座のあちらこちらを使いながら、登場人物の追いかけっことなる。
ひとあしごとに「みぎひだりなし」「ひだりみぎなし」とジグザグに歩きながら、柳澤明子がつぶやいている。月に照らされたような静謐な時。不思議な、呪文?彼女は、ここが劇場になるずっと前から、棲んでいたという。山中正哉もここの「子供部屋」で育ったという。それぞれの持つ時間が噛み合わず、誰が人でないものなのか、リセットされる。
新大久保の駅からグローブ座までは、かなり混沌とした道を通る。蔦の這うグローブ座のほうが町にとっては異空間かもしれない。
帰り際、いつもリーフレットを渡される。そこには、「蔦は夏蔦 蔦は吸盤を使って壁を上ります。みぎひだりなし。ひだりみぎなし。吸盤は、右・左とついて次は休み。左・右とついて次は休み(抜粋)」と書かれてあった。
2002年3月31日
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