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演劇レポート
グローブ座春のフェスティバル参加公演
「劇団B級遊撃隊」
『ある朝、10時ごろ』
作・演出:佃典彦
「グローブ座春のフェスティバル」は、将来有望な活動をする演劇、ダンスなどの若いプロ集団を選び、リハーサル室、劇場を無料提供するというもの。
今年、選ばれた4つの劇団の先陣を切っての公演が「劇団B級遊撃隊」の『ある朝、10時ごろ』。
だいぶ前に手にした「グローブ座春のフェスティバル」のパンフレットには、「不可解な情熱!笑いの迷路!渦巻く不条理!」とのコピーがついていて、劇団の名前が「B級遊撃隊」。この手のコピーが空回りした時の寒さときたら、雪が降りそうな今日の天気にぴったり、とちょっと不安な気持ちもあったけど、評価の高い脚本だという友人からの情報にすがり、東京グローブ座へ足を運んだ。
開演前、流れる曲は「ネーネーズ」かな?舞台には笹に団扇か凧を模したような飾りのついたものが数本据えられていて、土着的なお祭りの準備がされている。
桟橋か堤防か、海に面した突端の場所。3人の海女さんが延々と歌う、お祭りの歌を背中に聞きながら、祭半纏を着た男が「海流瓶」を作っているところ。そこへ現れたもうひとりの男。平和な田舎町の住人が見ると、充分うさん臭いアロハシャツ。「エロスと言うよりはエロ、エロと言うよりはモロ」な写真集のために地図にも載っていないほど小さな町をロケハン中。
安土・桃山時代の蟲退治(サナダ虫らしい…)伝説に由来する奇祭「蟲追い祭」の準備をする町。住人はお互いに深く納得していて疑いのない人間関係だけど、アロハ男(と観客)には、複雑怪奇。それがほぐされて、はっきりとした地図が描かれていく。
祭半纏の男の海流瓶作りを手伝わされるアロハシャツの男。祭半纏男は奥さんに呼ばれ、別の用事に出掛けていく。 海流瓶を持たされて手が離せない状況で、何時間も待たされるアロハ男の前には様々な町の住人が顔を出す。壊れてしまった灯台の場所で、ライト付きヘルメットをかぶり、一晩中クルクルと回る人間灯台を続けている兄弟。「蟲追い祭」のヒーロー「蟲男」の大役から逃れたい若者。
さっきの海女さんたちも次々現れる。3人の海女さんのうち、一人は、耳鼻科医の奥さん。もう一人はラーメンやの奥さん。残る一人は木下さんの「元」奥さん。その3人の夫はすべて祭半纏男。嘘をついて、隠し事をして、ひとりひとりに別の名前を名乗り、ではなくて、そこに誰がいようとも取り繕うことはない。
「それじゃあ、僕にこの瓶を持たせたまま、乾物屋のおじいさんの耳の治療に行ったのは誰なんですか?」「それは、耳鼻科の先生」「じゃ、シナチクの注文を聞かなきゃいけない人は?」「ラーメンやのさとうさん」「同じ人でしょ?同じ人じゃないんですか?!」
混乱するアロハ男に祭半纏男は名刺を渡す。財布から数枚の名刺を取り出し、トランプのマジックのように「1枚引いて」。『旅館はなむら亭・はなむら××』と書かれた名刺。「今夜のお泊まりはお決まりですか?ぜひ、はなむら亭へ」。はなむら亭なんていう旅館はこの町にはない。祭半纏男は、出会う人ごとに手持ちの他人の名刺を渡し、名刺の人物になっていたのだった。詐欺とか、悪意の嘘ではない。『ある朝、10時ごろ』一人の男が突然行方不明になった。
祭半纏男が海に放つ海流瓶には自分の写真が入れられていた。海流瓶は目指す人の元へ流れ着き、祭半纏男は自分が何者であったのかを知る。もう、それは、遅すぎたのだけど。
ジグソーパズルの最後のピースがぴたっとはまり、というラストだけど、「劇団B級遊撃隊」のお芝居は、システマティックなミステリー色は薄い。
「おいしいのかなぁ」と眉唾なレシピで、材料が次々に鍋に入れられる。「ねぇ、ホントに大丈夫?」が、いつしか「いい匂い」に変わってくる。供されたお皿の料理はほかほかの湯気を立てている。「おいしーねー」と笑顔になる料理が出来上がる。しっかりとした味付けのドラマ。
風変わりな町の人たち。疑問のひとつも持たなかったわけではないだろうに、祭半纏男を受け入れる包容力と言うか優しさと言うか…お人好し…。きっちりとした脚本とアドリブみたいな軽妙さ、「ドリフ」っぽい体を張ったドタバタのバランスが微妙で絶妙、喜劇仕立ての悲劇がハッピーエンドに見えるのは、錯覚かな。
「劇団B級遊撃隊」は名古屋を本拠地としている。東京では、下北沢の小劇場での公演が定着しているそうだ。小劇場とグローブ座ではかなり勝手が違うだろうけど、広い舞台を、孤立した小さな町を感じさせるように「狭く」使っていると思った。笑っているうちに、ふっと心に響いてくる、感覚で味わう優しさがとても温かく、おいしかった。
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