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vol.83

ボーヒュスレーン・ビッグバンド来日ツアーライブ
2001年10月21日〜10月27日

2001年10月23日
東京・赤坂@B-flat
ボーヒュスレーン・ビッグバンド
ピアノ=ラーシュ・ヤンソン、トミー・コッテル
ベース=森泰人
ドラム=ベンクト・スタルク

ボーヒュスレーン・ビッグバンド=BBBは、 1800年代、軍音楽隊として誕生したものの、軍とはだいぶ前に関わりを終了している。もちろんマーチングバンド的な演奏ではない。人の体に命令するのではなく、心を揺り動かす。とにかく、カッコいいビッグバンドだった。このカッコよさってどう伝えたらいいんだろう。

ステージに立ち、楽器を手にしても、緊張する様子はなく、絶えず笑顔のまま。仲間のソロを見守る表情はオーディエンスのそれよりもリラックスし、またエキサイトした満面の笑み。いつも一緒に演奏している仲間でしょ?日本の前に中国でも演奏してきて、昨日もライブやってきたんでしょ?その仲間の演奏がそんなに嬉しいか?と半ば呆れてしまうほどの笑顔。その笑顔だけで、店内の温度が常春になる。春というより、羊水に守られているような温かさ?大男20人のバンドなんだけどなぁ。

曲の合間にベースの森泰人がメンバーを紹介する。もちろん日本語で、メンバーは自分が何と言われているのかわからないはずだけど、わかっているかのように終始にこにこ。楽器を手にしているだけで、楽しくてしかたがないという様子。
演奏したのは、ビッグバンドと言えば、のデューク・エリントンのナンバーやマリア・シュナイザー、ラーシュ・ヤンソン作曲のBBBのアルバムから、そしてBBBのメンバー作曲のオリジナル曲と多彩。半分くらいは、他のバンドやどこかで聴いたはずの曲。知ってるはずだけど、いままで聴いたどの曲とも違うものになっている。それは柔らかく美しく温かな音が、大河の流れのようにゆったりと身体を運んでいくような。うっとりと目を閉じて、ただ流れにまかせていくことが心地よい。

曲ごとに主役となる楽器が入れ替わり、ソロをとる人はステージの中央に出てくる。その時の誇らし気な笑顔と送りだす仲間の笑顔が印象的。演奏中でも、ピカッとフラッシュが瞬き、ステージから客席を撮影。オリンピックの開会式や閉会式のようだ。メンバーはそれぞれかなりのキャリアの持ち主ばかり。その演奏を一晩で聴けたのは本当にラッキー。

客席には、日本でのライブのみ参加したラーシュ・ヤンソンにつられて聴きに来た「ビッグバンドはちょっとね」という人も多かったようだけど、1stステージ後の休憩時間には「いやぁ、これはすごいね」という声が聞こえる。逆にビッグバンドファンも裏切らない華やかさや賑やかさも存分な演奏。
ピアノはラーシュ・ヤンソンとトミー・コッテルが代わる代わるに。ラーシュ・ヤンソンのけれん味もあり、エンターテナー振りを発揮した演奏と美しいタッチで聴かせるピアノはいうまでもなく、さすが。音の出るものなら自分の体も、楽譜も楽器にしてしまう。ビッグバンドVSピアノという演奏もあり、一度に2つ楽しめるし、バンドをまとめる指揮を見れたのも楽しかった。「早くラーシュを」という空気のなかで、トミー・コッテルは演奏しにくかったんじゃないかと思うけど、さすがにこちらも一流の演奏。ビッグバンドの中のピアノって個性的でも聴きにくいし、かといって控えめでもつまらない。BBBに柔らかさを与えたのは、この人のピアノによるところが大きいかも知れない。ホーンの大群に負けず、それでいてトンガリすぎない柔らかく暖かみのある音。

BBBの印象として、ホーンとピアノトリオという構成が際立っているように思う。森泰人のベースは、いろいろ聴いているけど、今回のように太い音は初めてかも知れない。BBBでのベースはぶんぶんと高速回転するエンジンのようだ。それでもやはり力強いばかりでなく、F1のそれのように繊細で大胆。ホーンのソロも聴きたいんだけど、その横から聴こえるベースもしっかり聴きたくて、耳がいくつあっても足りない。
BBBには、もうひとつ動力がついている。ドラムのベンクト・スタルク。この人自身がエンジンのようで、汗びっしょりで顔を真っ赤にしたパワフルなドラムには「うわぁ」と感嘆の声が出るばかり。今回の来日は、間際に決まったそうだけど、ベンクト・スタルクが聴けてよかったと思う。ステージの位置でもホーンとピアノ、ベースの間にいて、演奏も同様。橋渡し役というより、双方を挑発するような。
年齢も多様で、全員がトップクラスのミュージシャンという豪華なメンバー。個性的ないくつもの色を混ぜる。個性はぶつかり合うのではなくて、融け合い、その結果、一曲一曲は大きな真珠のような塊となる。でもその塊がわずかに動くたびに、様々な色のかけらがときおり揺らめくように、光を放つ。最初で最後かも知れない来日公演、にならないことを願う。

2001年10月23日
東京・赤坂B-flatにて。


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