Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》Chinese Civilization

世界四大文明「中国文明展」

2000年8月5日〜11月5日

横浜美術館

関連サイト

NHKのHP 他の「四代文明展」の情報、巡回予定など
http://www.nhk.or.jp/event/bunmei/index.html

横浜美術館
http://www.art-museam.city.yokohama.jp◎横浜美術館

中国文明+黄河と揚子江。エジプト+ナイル、メソポタミアならチグリス・ユーフラテスと、反射的に出てきてしまうのだけど、それ以外なんにも覚えてないかも知れません。ただ、「古代文明ものって面白いのがあるから好きさっ」という気持ちで「中国文明展」に行ってきました。

まず、「石辟邪(せきへきじゃ-石の魔除け像)」が迎えてくれます。大型犬くらいの大きさの、角や翼を持った獅子のような像です。後漢の時代のものですが、中国らしさ、よりもペルシアやインドあたりの石像を思わせます。私達が思っている中国文明って、日本の文化に影響をおよぼした新しい時代のものかも知れません。この展覧会では、それ以前の中国の生活が見えてきます。中国の人々が何を大切に生きていたのか、目から感情にダイレクトに伝わってくるものが多く展示されています。

長大な中国の歴史を、石器時代にまで遡る雅びやかな王朝(?)文化と秦始皇帝以降の時代で、大きくアクセントをつけているように感じました。ひとつの展覧会でこれが中国文明だと定義するには、とにかく長い長い中国の歴史。現在進行形で、膨張を続ける土地でもあります。あれもこれもと満漢全席のつまみ食いのような、満腹感のある博物展でした。

展示の前半、古代中国で目立つのは「酒器」です。動物(ブタとかヒツジやワシ)を象ったものは、可愛いったらないし、人の顔やウミウシみたいな龍の形もありで、展示されているほとんどの器が「酒器」です。「あんたたち…」と突っ込みたくなるほど、可愛くお茶目な形の連続。精緻な模様、インカの出土品のような不思議な形も。その中には儀式に使われたものもあるのですが、「お酒、好きだったんだね」と思わず口をついて出ます。なんて大らかな土地だったのだろうと悠久の大地の空気に「あっぱれ」と深呼吸したくなります。

「ウミウシの酒器」

3体の「兵馬俑」が迎える展示室には、静かな緊張感があります。よく知られた始皇帝廟の等身大の兵士ばかりでなく、ミニチュアの人馬、家畜などもあります。よりリアルな「型」の中に、込められた思いがずっしりと感じられます。隅々まで施された細工の、ひとつひとつの工程に祈りが 刻み込まれているようです。

「兵馬俑」

「家畜俑」

実物に忠実に、そして愛情を注ぎ作られた家畜のその形は、なんだか丸っこくて、アニメーションのデフォルメのよう。そこから見えてくるのは、人々が何を大切にしてきたか、ということ。命を繋ぐものでもあり、慈しむものでもあり。戦いの時代であっても大事なのは、人の命と、ともに暮らす家畜。戦いで敵の命を奪うことと、仲間の命を思うことのジレンマにシンクロして切なくなります。

「中国文明展」の目玉は、後漢の「兵馬俑」やエジプトのミイラの衣にあたるような「銀縷玉衣(ぎんるぎょくい)」、高松塚古墳の女官によく似た女性の絵などでしょうか。それらは、本当に力強く精密です。「死」に対する感情の、おそれを含んだ厳かな空気を会場で共有することは大切な体験かも知れません。「兵馬俑」や「銀縷玉衣」を取り囲む人は、芸術性や学術的、という部分を吹き飛ばしてしまう感情の力に圧倒され、言葉少なです。「銀縷玉衣」は、タイルのような玉片を銀の糸で綴って亡骸に着せたもの。頭からつま先まで、それを着ていることで魂は永遠に不滅だと考えたそうです。 私は、その静謐な空気を感じつつも一方で「銀縷玉衣」の宮崎駿的なフォルムに気をとられていたのですが。

世界史で習った文明と大河の関係は、戦・兵器の発達に結び付けがちでした。そうではなく、平和で豊かな暮らしを得ることが、文明や文化の発展の動機だったのだと思います。戦いの発展は欲望の脱線なのでしょう。政治や商業が絡む以前の純粋な信仰の気持ちを思うことが、文明を振り返る意味なのではないかと思います。

2000年8月4日
横浜美術館

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