Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》Gidayu VS Tugaru
Vol.68
伝の会がおくる 日本の三味線音楽大集合!
2000年11月24日・25日・26日
東京・新宿 全労災ホール スペース・ゼロ
24日「三味線・江戸と上方-新内・小唄VS地唄」
25日「太棹三味線・その迫力と可能性-義太夫三味線VS津軽三味線」
26日「芝居と三味線アラカルト」
耳を疑うというか、目を見張るというか、とてもおもしろいコンサート。タイトルの通り、主役は三味線、3日間の「日替わりメニュー」は、上記参照。ひとくちに三味線と言っても様々な音色、サイズ、使う場面があり、それぞれの魅力を披露してくれるというコンサート。会場内の展示ギャラリーには、大(180センチ!)小いろいろな三味線が並んでいて、実際に手にとりトライすることもできたそうです(私はあまりの混雑に挫けたのですが)。
私が出掛けた25日は、細棹三味線-長唄-伝の会のお二人(杵屋邦寿・松永鉄九郎)の司会で進行。司会の二人が並んで立つ姿は、まるで漫才師。ボケとツッコミのトークに笑わせていただきました。まずは、さらりと軽く細棹三味線の音色を披露して、主役のひとりが登場。太棹三味線-義太夫-「櫓太鼓の曲弾き」。曲は楽曲の曲ではなく、曲芸の曲です。小柄な女性(田中悠美子)が大きな太棹三味線に背負われているように熱演。素早く動く手先に目が届かず、どこが曲弾きなのかわかりにくかったのが残念。
きっと三味線のお稽古をしている人には、いかにすごいか、いかに楽しい芸だったのかが、わかったのでしょう。笑いの後に、再び伝の会が登場。「雪尽くし」。積もった雪に吸い込まれていく音。重たいグレーの空。南天の目をつけた雪うさぎ。すぐに曇ってしまう窓ガラス。重たく湿った東京の雪の風景を思い浮かべます。 長唄の三味線がいちばん耳にする機会の多い音でしょうか。「軽い」と言っては失礼なのだけど、気負わずに聴ける。力を抜いて座り直して。ごちそうの後の日本茶とか、旅行帰りの「やっぱり、うちが一番」というセリフとか…。細棹三味線の音は、話声やくちぐさむ歌声に似ているんだなぁ。畳の上で聴きたいひとときでした。
再び太棹三味線のステージ。エレキギター+シンセサイザー(内橋和久)とのコラボレーションで、「娘道成寺」を。途中で道成寺だと気づくも、本筋の義太夫をよく知らないので、ケレンたっぷりの演奏も理解できず。
もうひとつの主役は津軽三味線(=木下伸市)。津軽三味線と尺八=土井啓輔、太鼓=茂戸藤浩司というメンバーで、「砂の舞」「あま風」というオリジナル曲と民謡を2曲。太鼓は、アフリカの太鼓を並べたようなイメージ。和太鼓にはちょっと見えない置きかたです。掌で叩くタムタムが5、6個並べてあるよう。
3つの楽器は、それぞれにベースラインとメロディを奏でているようで6つの音が聞こえます。尺八にマイクが付いていたり、エレキ三味線だったりするのですが、音色はすごくアコースティック。加工しない音がまっすぐにぶつかりあってスパーク。つやつやの津軽三味線と乾いた尺八が、力強い太鼓のうえで、けんか独楽のように弾きあう。シンセサイザーで作り出した音には(多分)ない、首を振る特徴的な演奏法や息づかいの音もピンマイクをつけただけの尺八はストレートに伝えます。それでいて、演奏している曲は、フュージョンのセッションそのもの。
ほんとうは津軽三味線は、ほかの楽器との合奏はしないものだそうです。最近は、セッションすることも普通に目に(耳に)します。これだけ楽しく、心地よい緊張感のあるセッションですから、やらないのはもったいない。
太鼓にしても、尺八にしても、音を聴くのと演奏者を見るのが忙しいくらい。舞台中央にある大太鼓は客席に背を向けて叩きます。「叩く」ではなくて、もっと何か力強い言葉はないものかと思います。人と太鼓の力の応酬だから、一方通行の言葉でなくて。多分、打った後の太鼓が返す波も利用しているのだと思うけど、音の波と筋肉の動きもセッションしてるようです。打楽器の演奏にありがちな、文字どおり「鼓舞」するとか、原始的なシャーマニズムを感じさせる部分がまったくなく、とても冷静で軽やかです。それがかえって素直に音を楽しませる。
「和の楽器」の伝統と新しさの両方を自由自在に行き来する演奏者たちの表情が印象的でした。楽器で表現できることを、思うままに演奏する純粋さや柔軟性は、進化する楽器の可能性でもあります。ジャズ、フュージョンだとか電子楽器との競演はまだ始まったばかり、その時点からの新しい楽器として聴いて行きたいと思います。
2000年11月25日
「伝の会」のHP http://www.koten.co.jp/dennokai/index.html
尺八の土井啓輔さんのHP http://www5a.biglobe.ne.jp/~sindo/index.htm
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