和泉宏隆ソロ・ピアノコンサート「たからじま」

7月30日
東京・お茶の水 カザルスホール

先日、インタビューさせていただいたピアニスト和泉宏隆氏のソロ・ピアノコンサート。

余韻を愛でるピアニスト、和泉さんのピアノを楽しみに出掛けた。この日は、波紋のように広がる余韻と音符の追いかけっこのようなコンサートだった。

インタビューで紹介した調律師小沼さんの調律ではなく、カザルスホール仕様の調律のためか、アルバム「たからじま」の曲も、CDよりスピード感があり、音符がぎっしりと詰め込まれた印象。

2部構成で、第1部が「たからじま」から。日本の唱歌をソロピアノにアレンジしたアルバムの“夏は来ぬ”から、また次の夏へと四季を巡る。荒々しい波しぶきを感じる“砂山”や白い情景が思い浮かぶ“雪の降る街を”…。一番暑い季節に涼やかさを感じることができる。音数が多いアレンジがショパンのようだ。

曲と曲との合間のお話が楽しいのも和泉さんのコンサートの楽しみでもある。楽しい雰囲気から鍵盤に向かった瞬間、高まる緊張感が客席にも伝わる。だが、その指が鍵盤に触れた時、想像力の磁場に引っ張りこまれるかのようだ。曲が終わりピアノの余韻と共に溢れるため息。緊張感が強ければ強いほど、曲の中で遊び、走ることができるのだろうか。

第2部は、“サイモンとガーファンクル”“カーペンターズ”そして“バート・バカラック”など、和泉さんが親しんできたポップスのカヴァーとオリジナル曲。カヴァーは、誰もがどこかで聴いたことのある曲ばかりだったけど、どこで、を自分の中で探すよりも和泉さんの色に染まったアレンジに新しい曲として受け止めるほうを気持ちが選ぶ。ポップスともジャズとも分けられないメロディアスなアレンジが、ファンがよく言う「和泉節」。第1部より地に足がついたといった感じだが、和泉さんのおしゃべりに共通する洒脱さもある。

そして、オリジナルの“Look at abyss” と“Three Swallows”。どちらも、ピアノトリオのための曲だそうだが、1台のピアノで、リズム、メロディー、ハーモニーを表現しても、密度の濃さは損なわれることなく、心へ響いてくる。耳に心地よいのはもちろんだが、和泉さんのピアノは、詩がなくても伝わるものがあるメッセージソングのようだ。音楽に対する思い、身の回りの小さいけど大切なこと。形にならない様々な思いがあたたかなシャワーのように体全体に降り注ぎ、しみ込んでゆく。その感情に浸り、拍手をするというリアクションに移れないこともある。そのほんの数秒が、演奏に対する素直な讃辞であり、メッセージを受け止めた証だと伝われば、CDでなくライブに足を運び時間を共有する意味があるのだとと思う。

MCでは、盛んに緊張している、と話されていた。「金鳥の夏」とか。この夏の暑さも和らぐころ、9月半ばから再開される「マンスリー・コンサート」では、ウッド・ベースとのデュオになるとのこと。

公演情報(7/30終演)はこちらでどうぞ→和泉宏隆ピアノコンサート「たからじま


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