Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》Izumi June 2000
ライブ・レポート
和泉宏隆マンスリーライブ#10
6月14日
東京建物八重洲ホール
撮影「WADA」さん
花散らしの雨の中だった前回のライブから2ヶ月。今月のライブは梅雨の晴れ間、見上げれば雲間に月。久し振りに月を見た気がした。
メンバーがステージに立っても、まだまだチューニングやセッティング中。座るだけ(?)の和泉さんが気忙しく、ふたつ、みっつ、鍵盤を叩く。ベースの佐藤さんがふざけ気味に睨んだりして、空気が和む。1、2ヶ月に一度、このホールに足を運ぶことが自分のホームポジションなのかな、と思う。いろんなジャンルのいろんな人のコンサートに行くけれど、和泉さんの八重洲ホールでのマンスリーライブを中心に巡っているみたい。
和泉さんの曲には明るい曲が多い中、1曲目「song of WISDOM」は、沈んだピアノの音から始まる。ベースの低音と絡み合うピアノの音を聴いて「和泉さん不足だったんだ」と実感するとともにほっとする。慌ただしい日々が続いて、リラックスできるのは、ライブやお芝居を観ている時だけだった。和泉さんのピアノの音は、日常を潤す時間を与えてくれる。
第1部は、早口でおしゃべりするピアノが続く。水滴がほとばしる。雨上がりの水たまりに、わざとじゃぶじゃぶと入っていったりしたっけ。いまでもやりたいけど、ちょっとできないよなぁ。でも、和泉さんのピアノは、水たまりより、もっとたくさんの動く水だ。ビショビショになりながら、ハイになってしまう土砂降りの夕立ち。そして、夏休みの水遊び。水撒きをしながら、いつの間にか遊びになってしまう。虹を作ってみたり、キラキラした粒を枝に乗せてみたり。第1部ラストの「Heartland」が流れ出す頃には、プールで思いっきり遊んだ後の倦怠感までも思い出した。水の中にいたのに、喉が乾くのが不思議だった。それで、アイスに飛びついたっけ。
マンスリーライブは、夏のあいだはお休みになるそうで、リーフレットに書かれていた「さまー・hぁけいしょん」という言葉に「夏の思い出」が沸き起こったようだ。夏っぽい曲は「White Mane」くらいなんだけど。
アフリカの赤い大地、といった感じの山本さんのパーカッション。木の音の佐藤さんのベース。涼やかな金属音の林さんのキーボード。そして、水の音の和泉さんのピアノ。異質なもののぶつかり合いは、紙は石に、石は鋏に、と、じゃんけんみたい。誰かが勝つと、次には別の勝者が現れる。おあいこもありで、決着のつかないぐるぐる周りがおもしろい。
スティービー・ワンダーの「Ribbon in the sky」から始まった第2部。軽い印象のポップスに、リラックス。ところが「Forhidde Love」など大人っぽいタイトルが並ぶ次の3曲は、喉が乾いて水分を欲しているようで、それでもオアシスには辿りつけないような苦しいピアノ。早弾きで音がとめどなく溢れてくるのに、誰も渇きを癒せないかのようだ。
ピアノはいつしか、水を突き落とす瀑布となる。急流にベースもパーカッションも飲み込まれている。和泉さん自身も流れに酔ったような演奏。
甘く甘くできそうなバラードに感情を入れず、荒削りに表現することで、キュビズムの絵のような「歪んだ横顔」を見せてくれたような気がする。美しい余韻、綺麗な楽曲ばかりに目(耳)を奪われてばかりだったなぁと、ちょっと反省。いろんな要素を足して、引いて、音楽はできていくんだ。いつもと違う和泉さんの演奏に、だからライブはおもしろいんだよね。と思う。
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