Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》Izumi Octobar 2000
Vol.62
10月14日
東京建物八重洲ホール
ピアノ:和泉宏隆
ヴァイオリン:中西俊博
黒いスーツに白いシャツの和泉さん、黒い服にバーバリーのサスペンダーをした中西さん。それぞれ自分の楽器と同じトーンの衣装だ。
ピアノソロの1曲目「Earth Song」に続いて、ヴァイオリンの中西俊博さんが登場。ピアノの余韻を引き継いで、だんだんと濃いグラデーションにしていくようなヴァイオリンの音色。日向の暖かさの「WHITE MANE」夏の印象の強い曲が、なんて甘くなるんだろう。
1月のマンスリーライブの松野弘明さんとのデュオは、新春ならではの凛とした空気の漂う緊張感があったのだけど、秋の気配が色濃くなったこの日のヴァイオリンとのデュオは、軽く甘いカジュアルな雰囲気。できれば、もっとリラックスした椅子で聴きたかった。
いつもは、和泉さんのピアノの音に「水」を連想していたのだけど、夏を過ぎて久し振りに聴く音には「実り」も感じられる。ピアノのタッチは軽く軽くなっているのに、こぼれてくる音は飴細工の金色のように儚げでありながらしっかりとした形がある。
金木犀、プラタナス、蜂蜜、銀杏の葉…金色のグラデーションと甘い香りが広がっていく。
第一部は和泉さんのオリジナルを中心に、中西さんの曲も交えての構成。中西さんは「この曲のためにヴァイオリンができること」という気持ちなのか、いろいろなテクニックを見せてくれる。ウクレレのように弾いたり、指で弦を弾いたり、短い音、長い音を駆使して曲を彩っていく様は楽しげで、音楽を愛する、楽しむいたずらっぽい表情がいいなぁ。ヴァイオリンのコンサートに行けば、特別なことでもない奏法なのだけど、ひとつのライブでこれだけ様々なものが見られる(聴ける)機会は、そうはないと思う。
第2部は、映画音楽。おそらく和泉ファンならリクエストしたいと誰もが思ったことがあるだろう「星に願いを」や「ニュー・シネマ・パラダイス」は、さらりとしたアレンジなだけに映画の場面を印象的に思い出す。「ニュー・シネマ・パラダイス」のあのラストシーンのトーンと静かなピアノの音がシンクロする。おそらくビデオを見直したら、本来の曲に「こういう曲だったけ?」と違和感があるんじゃないかな。
濃厚なガーシュインの「I Got Rhythm」は、ピアノとヴァイオリンの息の合った掛け合いに、客席も黙って聴いてはいられないというくらいの「ノリ」のよさ。ガーシュインは初めて、との言葉だったけれど、生き生きとした曲に、もっとガーシュインを弾いてもらいたいと思う。
曲も彩りも様々なライブだったけれど、「今の和泉さん」の姿にくっきりとした輪郭が見えた。今までに時折感じる「苦しさ」がなくて、どっしりと落ち着いた印象が演奏にも深みを増しているよう。久しぶりのマンスリーライブ、堪能しました。という感じ。
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