Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》Izumi february 2000

ライブ・レポート

和泉宏隆マンスリーライブ#8

2月13日
東京建物八重洲ホール

ピアノ:和泉宏隆

そういえば、和泉さんのソロ・ライブは久し振り。昨年の秋から、ウッド・ベースとデュオ、トリオ、グループ、ヴァイオリンとデュオと彩り豊かな世界を楽しんできましたが、今回はピアノのみ。そろそろ次の展開を、の前に原点に立ち返ってという趣向だったようです。

今までのライブでよく演奏された曲目も、今日は少しでも新しいフレーズを入れながら。すべてが満点の出来というのではなく、和泉さんも口惜しさをストレートにあらわしたり。

以前、お話を伺った時の、「楽曲が少しずつ変わっていく様子も楽しんでもらいたい」という言葉を思い出します。完成品を聴かせることが目標のライブも楽しみだけど、リアルに音楽が日常であることを感じられるライブは、和泉さんの懐の深さも伝わってきます。

この日唯一の非オリジナル曲「砂山」(中山晋平作曲のほうです)では、鉄のように重く黒い海とうねる波、雲の間を走る月、一瞬の静寂に見える銀河…と絵画的なモチーフが浮かんでくる一方、どうしても「荒海や佐渡に横たう天の川」と芭蕉の句が思い出されます。「砂山」の歌詞は知っているんですが。

「奥の細道」にはフィクションもあるそうですが、和泉さんの曲も現実の風景、心象を凝縮した箱庭のようなものを感じます。100%想像だけで作られた世界でもなく、和泉さんの思い出とイメージを編集した憧憬が見え、それがまた自分の思い出と結びつきます。時々によって、アレンジが変わったり、ほんのちょっとしたフレーズが耳に残ったり、そうして音楽によってすっかり忘れていたエピソードが浮かび上がったり…。

3曲ごとのブロックで構成されています。「Elegy」「Alone」「Mirage」という3曲が演奏されたブロックでは、艶っぽく狂おしい音色にちょっとびっくり。以前にライブやCDで聴いた印象よりもとても大人っぽい。

わが恋は ゆくえもしらず はてもなし 逢ふをかぎりと おもふばかりぞ 凡河内躬恒

なんていう恋歌が浮かんできます。ホールの白い壁と金色の照明も雰囲気を盛り上げて。

ブロックのテーマの正解はわかりません。それを探りながら、勝手な物語を考えながら聴くのも面白いかもと思いつつ、ただただ聴くばかりなのですが。

18曲演奏されたなかで1曲だけ、初めて聴く曲がありました。タイトルは募集中という新曲です。明るい光、花の香を運ぶ風(ディオリッシモの香でした)、と春の息吹を伝えるようなリリカルで新鮮な曲でした。

2月13日 東京建物八重洲ホールにて。


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