Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》Kitchen Timer
演劇レポート
「劇団トリのマーク〈通称〉」
【キッチンタイマー】
2000年7月21日〜7月23日
東京・赤坂 アトリエ「フローラルアカサカ」にて
「劇団トリのマーク〈通称〉」のHP
@http://www.bananawani.org/mountain/oec/tori/index.htmlへ
夏休みです。冷蔵庫を開けるのが楽しみだったことはありませんか?冷たいおやつ(ゼリーとかプリンとか)を作って、10分にいちどは扉を開けて、つついてみては、怒られたり。諦めて外に遊びにいったり、お昼寝したりして、時を忘れると、ぷるんとできてるわけです。
今回の「トリのマーク」はそんな時間のお話でした。赤坂のビルの1室。螺旋階段を上っていくと小さなギャラリー。大きくとった窓に白いブラインド。「こんなところに?」キッチンがあります。冷蔵庫も(両方から開くの!)食器棚もあって、あとはベッドでもあれば暮らせてしまいそうなところ。(廊下側はガラス張りだけど)
女の子(=柳澤明子)が買い物から帰ってきます。買ったものを取り出しては、カウンターに並べ、レシピを冷蔵庫に貼りつけて、さて何かを作り始めます。簡単なお菓子を作った経験があれば、その手順で何ができ上がるかはすぐにわかってしまうのだけど、ホントのキッチンを使って、 ホントに作ってます。そうそう、お鍋に入れてから、火を点けるのが最大のポイントだったっけ。
「トリのマーク」のお芝居の中では、必ず一度はパレードが通ります。パレードを見逃さない少年(=櫻井拓見)がブラインドの隙間から見たのは、「はやパレード」。鼓笛隊も太鼓を叩きながら、早歩きで通るパレードだそうで…。
それを見逃して悔しがる男性(=出月勝彦)と他の人物との会話が面白い!彼とは、英語の教科書を直訳したような言葉でなければ会話ができないのかも。「あなたがわかりませんよ!(=あなたの言ってることはめちゃくちゃ!)」を「『あなた』がわからないのか…!」と受け取ったりするのです。「トリのマーク」のセリフは、とっても自然ですんなりと耳に入って来るのに、わざと話し言葉と書き言葉の誤解の罠にかかってくれる。
キッチンのカウンターには小さな木靴が飾ってあるかのように乗っています。それは、「遺留品」かも知れないとのこと。「遺留品」なのか、そうでないのか、見極める人(=山中正哉)が呼ばれます。
かつて、そこは遺跡だったそうです。それで、時々「遺留品」が現れる。掘ったり、探したりしなくて、「遺留品」のほうから、現れる。手を触れずにそのままにして、忘れ去ってしまえば、いつの間にかなくなっているそうです。憶えているうちは、そこにある。
それは、時々、コートのポケットから出てくる「切符」みたいなものかなぁ。憶えているなら、そんなとこに入れっぱなしにはしない。けれど、忘れているから、そこにあるわけで…。憶えている時と忘れている時の存在のうらおもてって、なんだか不思議だ。出てきた切符は、誰に会った日なのか、どこからの帰り道なのかを教えてくれて、思い出も導き出してくれる。ポケットに入れたことを忘れてしまったくらい軽い切符が、アルバムに貼りたいほど重いものになっていたりして。
木靴は「遺留品」でした。そこにあることを忘れてしまえば、なくなってしまうもの。戸棚の中からは、古びたコップに入った土が、冷蔵庫の中からは、大きなカエルも出てきます。土は、ふらりとやってきて、ブラインドから外を眺めるのを日課にしている少女(=中村智弓)が愛おしげに持って帰ってしまいます。彼女は、今はなくなってしまった土や草花を探しているらしい。カエルは、女の子(=柳澤明子)がどうしても手放したくないようで、また、冷蔵庫の中に帰りました。なくなる瞬間を見たいのか、いつまでもそこにある、と憶えていたいのか…。
お芝居の終盤では、出来上がったゼリーを観客にもお裾分けしてくれました。山中さんと柳沢さんの会話が続けられている中で、出月さんと櫻井さんが配ってくれて。のんびりと喫茶店で過ごすくらいの、お芝居の上演時間としては短かめのひとときですが、一杯のお茶のリラックス、リフレッシュさせる力と同じくらいのお芝居です。
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無断転載禁止 掲載:アーク編集室