Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》MANZAI IN NHK
電光掲示狂言スペシャル
野村萬斎 世紀末・地獄狂言の会〜ゆかたでギャンブル!!〜
NHKホールの舞台に4本の縦長の電光掲示板。「けいじ君」というその電光掲示板が立て板に水(の逆流)のごとく流れる文字も滑らかに「前説」をしてくれる。現れる文字に従って「イエェー!」とか「パチパチ」と拍手の練習。ほぼ満席のお客さんは、見事に(若い)女性ばかりの野村萬斎の狂言。客席のノリもよかった。
最初に舞台に上がるのは、囃子方。笛、小鼓、大鼓、太鼓が暗い舞台の上に、青、赤、緑、黄と白のスポットライトに照らされて、「獅子-揉み出し」を演奏する。高音の笛が空間を切り裂き、続くリズムセクションの縦横無尽のアンサンブルがかっこいい!特に小鼓、大鼓の掛け合いのトリッキーなリズム展開はすごく新鮮。法要の寺院を彩る五色の旗をイメージさせるスポットライトだけの演出。シンプルだけど、すごく深い空気に満ちている。天空に飛天が舞っているよう。
野村萬斎の登場。何もない舞台に一人で立っても、雰囲気が一気に賑やかに華やかになる。野村萬斎によるワークショップ形式で、これから演じられる「梟山伏」の登場人物の背景とストーリーを紹介。外国で狂言を披露したり、子供達に見せる時、とても人気のある、「受け」がいい狂言だとか。そして、フクロウの所作の真似を客席全員参加で。けいじ君に「Stand up!」と号令をかけられ、野村萬斎には、「Repeat after me!」と促され、膝を抑えて屈み、「ほー!」とYの字に伸び上がる。続けて「ほー」とデクレッシェンドで脱力。
弟に取り憑いたフクロウを調伏してもらおうと格式の高い(実は胡散臭い)山伏を訪ねる兄。説得の末、弟に向かい祈り始める山伏。弟はパタパタと羽ばたき「ほー!ほー」。祈れば祈るほど、元気になるフクロウ。やがて、フクロウは兄にも憑き、「ぱたぱた、ほー!ほー」。山伏も「ぱたぱた、ほー!ほー」。舞台の上は、それは賑やかに、客席は爆笑。袂を翼に見立ててぱたぱたする様子がカワイイ。
「梟山伏」は、能舞台を作らずに、淡いライトの強弱で橋掛と能舞台を表現。けいじ君は、内側の2本がセリフを表示する。セリフは、すべてではなく聞いてもわかりにくい言葉のみ、その現代語訳を外側の2本が表示する。演者とけいじ君を見てると、ちょっと目の動きが忙しくなる。事前にパンフレットの語句解説を読んでおけば、必要なものでもないかも知れない。とりあえず、日本語だから。
ラストの「博奕十王」。極悪人でも、唱えるだけで極楽浄土へ行けてしまう「お題目」が流行した時代。地獄に落ちた罪人を主な食糧とする地獄は飢饉。窮乏に閻魔大王みずからが鬼を従え、六道の辻へ死者をさらいにくる。通りかかったのは、博奕打ち。なんとか浄土へ行こうとサイコロ博奕に閻魔大王を誘う。
この狂言で、電光掲示板、CG、大型スクリーンが大活躍する。舞台はそのまま、制限のない空間で演じられる。鬼は、型をキメてセリ上がって登場。仮面にカツラに重厚な衣装と、「カブキロックスだよ、これじゃ」。
「浄玻璃の鏡」に野村萬斎演じる博奕打ちの 生前の行動が映し出される。大型スクリーンを使ったその映像は、なぜか一昔前のマジシャンのようなフリフリのブラウスに背広。カードにスロットマシーンに麻雀と、オッフェンバックの「天国と地獄」に乗せて生前の勝負が目まぐるしく映される。博奕に興味を示した閻魔大王に、博奕打ちはサイコロの勝負を持ちかける。博奕打ちが負ければ一飲みに、勝てば鬼の持つ鉄杖などを賭けて。何がなんでも「1の目」と言い張る閻魔大王。鬼たちも「3と言えば勝ったのに!」などと盛り上がるが、7回勝負して、博奕打ちの全勝。閻魔大王、鬼たちは身ぐるみ剥がされ、浄土への切符「金札」まで取られて、博奕打ちは浄土へと宙づりになって旅立つ。
大きなサイコロを振って、その目は大型スクリーンに映し出される。幕間の休憩時間に、観客は自分が予想する目を記入して、提出していた。その控えを持ち、ビンゴ大会のような中、進行した。「話を知っていれば、絶対1は書かなかったよね」不勉強が悔しい。
この「博奕十王」は、狂言の台本をそのまま使って、NHKホールで演じた現代劇のようで、さらに言ってしまえば、予定調和のコント、なのだけど面白かった。気持ちよく笑って楽しかった。狂言を演じる野村萬斎を久し振りに見たのだけど、ルックスの人気だけではないんだなぁ、と思った。ひとり舞台に立っただけで華やぐのは、人気ゆえのオーラかも知れないけど、張りのある声や、きびきびと大きな所作は、とても積極的に狂言を演じようとする気概のようで。
こういう舞台ではなく、能楽堂の舞台でふつうの狂言を見たいと強く感じた。早速、来月の能楽堂での公演を予約してしまったのは、策略に乗ってしまったのかな、と思うのだけど。
2000年8月10日
NHKホールにて。
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