直前インタビュー

「加藤健一さんの稽古場訪問!」

9月21日、加藤健一事務所江古田スタジオにて。

加藤健一事務所 Vol.43

ニール・サイモン「おお、星条旗娘!」

■東京公演■

10月21日(木)〜11月14日(日)

全席指定/前売4000円  当日4300円

会場/下北沢本多劇場

電話予約・お問い合わせ/ 加藤健一事務所 03-3557-0789

「アーツ・カレンダー」内の関連ページ→おお、星条旗娘!
http://www.t3.rim.or.jp/~hs01-ckc/Kato_Office/Main.html

西武池袋線「江古田」駅。音楽大学がそばにあり、クラシック専門の(敢て)レコード店、街角に貼られたクラシック公演のポスター、落ち着いた佇まいの喫茶店。自然な目線で空が見える。まだまだ残暑の厳しい中、そこだけは紅葉しているような雰囲気の江古田の町。

雨の中お彼岸のお線香の薫りが強く漂うお寺の脇を通り、加藤健一事務所江古田スタジオにお邪魔しました。

友人に誘われて、「加藤健一事務所」のお芝居を見に行くようになって、もう5、6年になるでしょうか。

いつ、何を見ても間違いなく上質なお芝居。

涙を流して笑ってしまうコメディーにすっかりハマってます。

下北沢の本多劇場に「カトケン」を見に行くメンバーはいつも決まっています。

幕間に話すことも決まっていて、「次、どうする?」

たとえば、6月の舞台を見に行くと次回10月の公演のチラシを手渡されます。ほぼ4ヶ月に1回の公演。

チラシを見ると、役者さんの笑顔の写真、ストーリーの紹介…もう明日にでも上演できそうな様子。

やっぱりおもしろそうだし、「あの人好きなんだー」「この人見たかったの」という役者さんの名前に、もちろん「次も行こうね」となるのです。

「加藤健一事務所」の舞台は、おもしろい!のは、当然のことながら、そんなペースなのにとても濃く完成度の高いお芝居。

加藤健一さんが何人もいるわけではないのに、早いサイクルと完成度が比例するなんて。

そのあたりのいくつかの疑問と次回公演のことを加藤健一さんに素人インタビュアーのWADAが伺って参りました。

半地下の稽古場。ドアやテーブルが舞台に見立てて、置かれています。大きさや位置を定めるためなのでしょう、まだ天板と脚がバラバラのテーブルだったりします。その上には、タイプライターや電話。立ち稽古初日なのに、本舞台と同じように動ける準備はもうできてるんですね。

あ、角野さんだっ。稽古場の隅に、出演者のひとり角野卓造さんが台本とにらめっこ中。

キョロキョロしてはいけないと思いつつ、加藤さんはどこっ?と目が探してしまう。

舞台で見る加藤さんは、朗々とした声と存在感でとても大きな人という印象があったのだけど、目の前にいらっしゃると普通の声で普通に話す人。

ご挨拶をして、加藤さんにインタビュー開始。初心者、勘違いな質問ではじめからハズす。

…落ち込む前に質問を続けよう。

「ひとつの公演の制作にどのくらいの時間がかかっているのでしょうか?」

「次は、これをやりますよって、お客さんに発表できるのは、4ヶ月くらい前から。ひとつのお芝居を上演しようとするには、2年くらい前から準備が始まってます。」

「ということは、何本も並行して準備しているということですよね?(ディズニーみたい!)」

「今もこう(横に線を書くように)何本も。2年後に何をやるかっていうのも、もう決まってるんです。」

「加藤さんは、その準備にどういう部分で係わってらっしゃるのですか?」

「プロデュース、ですね。脚本をみつけて、役者さんをみつけて、いろんな材料を揃えたところで、演出家に渡す。ここまでがプロデューサーの仕事です。」

「加藤さんは、演出はされないのですか?」

「加藤健一事務所の公演では、やりません。プロデューサーが演出も出演も、だと無言の圧力があるようで、あまりいいと思わない。演出家におまかせですね。」

次回公演の演出は、綾田俊樹さん。インタビューのあと、立ち稽古を見せていただくことになっている。プロの演出の様子なんてなかなか見る機会がないので、楽しみ。

私の頭の中では、加藤健一事務所=コメディー=ニール・サイモンと公式が出来上がってしまうほど印象が強いので、そのことを伺う。

「加藤健一事務所では、ニール・サイモンが上演されることが多いですけど、そういうコメディとの出会いはいつ頃だったのでしょうか?」

「ニール・サイモンの作品との出会いは、20年くらい前の、杉浦直樹さんと石立鉄男さんがやった“おかしな二人”ですね、パルコ劇場で。」

角野卓造さんとは、“パパ、I LOVE YOU!”以来、5年ぶりの共演だそうです。

ニール・サイモンという脚本家については、チラシの加藤さんの言葉を引用。「サイモン作品は笑いの中にも涙があって、落語の長屋ものに背広を着せたような感覚」

「加藤健一事務所ではコメディーの上演は、はじめから?」

「若いころは、鋭い、とんがったのがやりたいでしょう。それで、そういうのをやってたけど、お客さんが楽しんでくれるものは、って考えると、だんだん楽しめるコメディーになりましたね。でも、全部がコメディーじゃなくて時々シリアスなものもやりますよ。」

そうそう、ひとり芝居の“審判”とか、コメディー仕立てだけど、エイズを取り上げた“レグと過ごした甘い夜”などありました。

「外国の作品が多いですけど?」

「井上ひさしさんとか三谷幸喜さんとかおもしろい作品はあるけれど、全部上演できるという訳でもなくて。でも時々は日本の作家のもやりますよ。」

次回公演“おお、星条旗娘!”のことを伺わなくては。

「加藤さんが楽しみにしている部分は、どういうところですか?」

「お芝居全部が楽しみだけど、強いていうなら、自分の演じる役がどれくらい変な役に出来上がるか、ってことかな」

加藤さんが演じるのは、隣に越してきた美女に一目惚れの末、ストーカーになってしまう純情男ノーマン。

「見てる人が笑っちゃうより、気持ち悪いくらいのストーカーにしようかなと思ってます。」

一目惚れされる女性ソフィー役は、富本牧子さん。

加藤健一事務所では、毎回ファンになってしまう役者さんが増えていくのですが、そんな素敵な役者さんを見つけるのもプロデューサーとしての加藤さん。

ほとんどの役者さんは、実際にお芝居を見て、“ラブコール”だそうです。もちろん、富本牧子さんも。

手際の悪いインタビュアーに親切にお話をして下さった加藤健一さん。そのていねいさがお芝居の完成度にも現れているのでしょうね。

「加藤健一事務所」制作の中島さんとアーツ・カレンダーの鈴木さんがお話しているのを聞きながら、目は、稽古場をウロウロ。

加藤さんは重そうなダンベルを上げ下げし、間髪入れずに縄跳び。何本ものお芝居を並行して進めながら一本づつを作り上げていく集中力が、その姿に見えました。

稽古場には、小道具を整えるスタッフのかた、壁に貼られた衣装のイラスト。

ソフィー役の富本牧子さんは台本を片手に柔軟体操。

ノーマンの相棒、アンディ役の角野卓造さんは、台本に没頭している様子。

稽古場に人が増えていって、それぞれがマイペースで動きながら稽古が始まる気分をわきたたせているようで、見ているとなんだかワクワク。

もう、幕は上がったという感じ。

そこで、演出の綾田俊樹さんが登場。

私が伺ったのが立ち稽古初日。

何から、始めるのかと思っていたら、綾田さん、役者さん、舞台監督さんたちで、舞台セットの確認からでした。

本番さながらに動いてみて、あらかじめ並べて置いた机を遠く離したり、上手・下手のバランスで、椅子を増やしたり。

そして、稽古開始。冒頭のアンディ役角野さん登場の場面から始まる。

Tシャツにジャージ、その上に衣装のジャケットを羽織る。セットもまだまだ仮のものなのに、本多劇場の客席で見ているような気分になる。コメディーだから、笑ってしまう場面もある。のんきに笑える立場にいるのは私だけ、声を出して笑うのは我慢したけれど、立ち稽古の初日からこんなにおもしろいことにびっくり。

お芝居が進みながらも、大道具や小道具の確認がされ、アイデアが出される。

そのやり取りもおもしろいんですねェ。

しばらく見せて頂いて、切りのいいところでお暇したのだけど、立ち去りがたくその場で全部見てしまいたい気分と、完成品を劇場で見たい気分と。この日見た稽古場の様子が劇場で見る日にどんなふうになっているのかがすごく楽しみ。

最後に訂正です。

前回公演の“ザ・フォーリナー”のレポートのなかで、「目の不自由なかたのための舞台装置説明」について書きました。事前に申し込んだ説明の必要な人だけを対象にしないで、いろんな人に説明してくれればいいのに。と書いたのですが、これは私の誤解でした。

開演1時間前に説明の時間が設けられていますが、その時に「入れて」と言えば、誰でも入れるのだそうです。ただ、種明かしとかストーリーの先までわかってしまうこともあるそうですので。

“おお、星条旗娘!”での、「目の不自由なかたのための舞台装置説明」は、10月30日13時と11月3日13時の公演で行うそうです。

大変失礼いたしました。


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