Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》Rinpa-Yakai
展覧会寸評
「琳派空間」と「華麗なる夜会」
Bunkamura 10周年特別展「琳派空間」
東京・渋谷 東急百貨店本店 Bunkamura ザ・ミュージアム
Bunkamura URL:http://www.nihon.net/bunkamura/
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パリ・モード1870-1960 華麗なる夜会の時代
東京・目黒 東京都庭園美術館
テレホンサービス:03-3443-8500(開催中の展覧会を録音テープで案内)
東京都庭園美術館 URL:http://www.tokyo-teleport.co.jp/teien/index.html
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秋桜(コスモス)コンサート
(東京都庭園美術館ミュージアムコンサート)
10月3日
東京都庭園美術館 迎賓館1Fホール
美術館入場者対象(整理券により入場:無料)
ピアノ:鳥羽亜矢子
ヴァイオリン:三上亮
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「琳派空間」
これは、いまいち。というイベントをわざわざレポートすることはないと思うのですが、余りにもひどいものはついつい悪口もいいたくなってしまいます。
尾形光琳は、高校生の時に青山の根津美術館で観て以来の私のアイドルなので、琳派は結構勉強しました。
インパクトのある大作もいいのですが、工芸の小品にも和歌や茶道などいろんな要素が凝縮されていておもしろいものです。
Bunkamura 10周年の特別イベントとのことで、大いに期待して出掛けました。
出品は小品も含めてわずか35点。何をおいても観ておきたいという作品は皆無。個人蔵のものは数点ありますが、ほとんどのものはいくつかの美術館で普通に見ることのできる作品ばかり。
各美術館、寺院の門外不出のお宝で、国宝・重文が多い琳派の大作を一堂に集めるとなったら大変なことです。目玉の作品ひとつあるだけでもそうでしょう。でも、だからと言って、これじゃ…。
無名であっても小品でも、琳派ならではの様式美やおもしろさを感じるものがあればいいのです。でも…。
魅力的な作品を見せたうえでなければ、その世界を分解する悦び・意義はないと思います。
作品にカタログ的な意味しかないのなら、広いザ・ミュージアムを使っての「空間」展示に期待したいところですが、色紙や屏風はごく普通にガラスケースに入れられただけ。中央に残る広い空間には、尾形光琳の有名な「燕子花図屏風」を奈良・薬師寺の花会式で使われる造花のカキツバタで再現。カキツバタは、珍しい造花ですが、すでにそれはデザイン化されたもの。生花か精巧な造花を使わなければここでは意味がないのでは?それを囲む葉や橋のピカピカしたお粗末さ。その八ツ橋の上は歩けるようになっていますが、ピカピカ、テカテカで足を滑らせて水にはまりそう。そして、琳派の素材としてよく描かれる「東下り図」「秋草図」も造花で散歩道風に再現されています。商店街の電柱にくっついてる飾りみたいな枯れ葉。こちらも歩くのが恐いほどのピカピカ…。
なんでこういうことするかなぁ…。琳派の魅力は、光琳や宗達が見た自然、感じたものをモチーフにしてちりばめたポップアートと言ってもいいほどのデザイン性。それを不完全に再現するなんて作者に対して失礼だし、無意味。琳派の世界を「空間」に「再構築」する、との意図かも知れないけど完全な勘違い。
空間にある立体を「平面」にデザイン化したことが琳派の特色であり、作家の意図であるのだから、それを打ち崩すだけの展示をして欲しかったです。
「生き続ける琳派 絵画・工芸・生け花の競演」が Bunkamura のコピー。
小原流の生け花とともに立体的表現する、とのことで会場には、それらの生け花も展示されていますが、仰々しい「セット」に囲まれた花々は、書き割りの背景ほどの存在感さえありません。
ひとつひとつの出品に説明がまったくありません。伊勢物語の中の和歌とその情景を現した硯箱など、説明がなければ、それがなんであるか、琳派の絵画や工芸を見なれない人にはわかりづらいでしょう。
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「パリ・モード1870-1960 華麗なる夜会の時代」
荒んだ気持ちで渋谷から目黒へ。東京都庭園美術館は迎賓館としても使われた旧朝香宮邸。アール・デコ様式の美しい建物と室内は、展示品がなくても立派な美術館。インテリアを見るだけでも価値あるところに、19世紀末のアール・ヌーヴォー-20世紀初頭のアール・デコの時代のパリ・オートクチュールの夜会服が並びます。
100年足らずで大きく姿を変えるビジネスとしての服飾の歴史、スタイルの流れ、女性の社会的な位置。
20世紀から21世紀へのバトンタッチが大騒ぎの今、切り取られる100年のポイントがあえてずらされているのもおもしろいでしょう。
サティのピアノ曲が流れる中、トルソーが並んでいるだけのさり気ない展示の仕方なのだけど、インテリアとドレスのコーディネートが素敵。
夜会服だけではなく、デイドレスという昼間の普段着などもあります。図書室や書斎にはシックなスーツやワンピース。
ディオールやシャネルの完璧なバランスのドレスも数点展示されています。
その他には、作者不詳ながらビーズ刺繍が見事なドレスやスキャパレリの香水瓶など約100点。
「お手を触れないでください」そんなプレートを美術館ではよく見ます。ここにはそれがありませんが、手を触れようとする人はいません。展示されている「作品」というより、そこにある「歴史」が無意識のうちに見るものに敬意を感じさせるのでしょう。
芸術作品を作ろうとしたのではない、身を飾る(とても贅沢だけど)というシンプルな目的がかえって服たちに「ちから」を持たせたのかもしれません。
お気に入りの服を大切にしまっておく。流行遅れだったりで着られなくなっても、手元に置いておきたい、そんな、服を慈しむ気持ちを100年前の人たちも持っていたのだろうな。
どんなに華やかな夜会だったことか、映画で観た映像ぐらいの手掛かりしかないのだけど、あるべきところにあるべきもの。この展覧会に庭園美術館ほど相応しい場所はないでしょう。
動かないトルソーと人が住むことのなくなった館。何十年か前の空気で満たされているような不思議な気圧。
まるで、こちらが幽霊になって貴婦人達に見られているような視線を館から感じます。
庭園美術館では、「パリ・モード展」に続き、来年1月からは「アール・デコと東洋」という展覧会が催されます。
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「秋桜コンサート」
「パリ・モード…」を観に行った日曜日、庭園美術館の入館者を対象にした無料のコンサートがありました。
手の届かない世界に酔った目の次に耳にも栄養を、ではないけど本物の迎賓館のホールで室内楽が聴ける機会はそうそうあるものではないので、もちろん整理券をもらってホールへ。
演奏されるお二人の名前はまったく知らなかったし、失礼ながらこの手のコンサートは名実共に演奏会の機会のない人が出演するものと思っていましたが。
プログラムによれば、お二人ともとっても若いのになかなかの経歴の持ち主。
まず登場した鳥羽亜矢子さん。小柄でマイクを使っても消え入りそうな声で曲の説明をしてくれる様子がたよりな気で、思わず「頑張れ!」と言いたくなってしまうほどだったのに、演奏に入ると力強くダイナミックな音にびっくり。シューマンの「クライスレリアーナ」より、いくつかの楽章を演奏。とても男性的な音で鮮やか。
続いてヴァイオリンの三上亮さん。会場のあちこちからもその風貌に戸惑いの声。プログラムによれば、今年の春に大学を卒業したとあるけれど、白いシャツに黒いパンツが制服の高校生のよう。こちらは、イザイの「無伴奏ソナタ 2」を。高低に散らばる音符を的確に捉えて押さえ付けるような演奏。
そして、ピアノとヴァイオリンでベートーヴェンの「ロマンス」を。
1曲目の力強さとうって変わってピアノ、ヴァイオリンともリリカルな可愛らしい音、柔らかい表情で楽し気にピアノに向かう鳥羽さんが印象的。やはり、演奏者が楽しんでいる空気は伝わるものです。こちらの表情も和んできます。
最後にヴァイオリンで、パガニーニの「24のキャプリス」より24。ヴァイオリンとギターのために書かれた曲をヴァイオリンだけで演奏。もしかしてギターソロの部分を弓を使って弾いている?「無伴奏ソナタ」では、少々荒っぽい演奏に聴こえたのだけど、パガニーニは、チェロのような豊かさを感じる演奏でした。
初めて聴く演奏者と初めて聴く曲。清冽な印象に満ちた小さな音楽会。
実は、土曜日に出掛けるはずだった庭園美術館。予定がずれて日曜日になったために鳥羽亜矢子さん、三上亮さんのお二人を知ることになり、嬉しい番狂わせとなりました。
迎賓館の内部は、旧朝香宮邸の部分とくらべるとちょっと寂しい建物なのですが、大きく開いた窓からは緑に埋め尽くされた庭園が広がります。もっと、秋が深くなればきっと紅葉も楽しめるでしょう。
このミュージアム・コンサートは、10月18日、11月13日、23日、12月6日、14日にも行われます。それぞれプログラムは変わるようです。次回の出演は、ピアノ:齋藤香織さん。
蛇足:庭園美術館内部のカフェのサンドイッチがすごく美味!
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無断転載禁止 掲載:アーク編集室