Report/Scandinavian Connection-4

インタビュー&ライブレポート

「スカンジナビアン・コネクション'99-Nov」

11月26日、南青山のライブハウス、BODY & SOUL は、お客さんもぎゅうぎゅう、ステージも5人のメンバーが乗るにはぎゅうぎゅう。入り口のほうを見れば入りたくてもドアが開かないほど。人で溢れていました。

森泰人さんのベース、アンダーシュ・パーションのピアノ、マグヌス・グラーンのドラムのトリオから始まりました。低くなった太陽が金色に染める散歩道を落ち葉がころころと舞う秋の街角が浮かんできます。

寂しげな風景ではなく、秋の楽しさ、美しさがぎゅっと詰め込まれたような豊かなプロローグ。

11月25日。

森泰人さんとスカンジナビアン・コネクションのメンバーがいよいよ来日。

成田に到着してから数時間後、皆さんとお話する時間をとっていただきました。

とは言っても、片言どころではない英語力の私ですので、「アーツ・カレンダー」でお馴染みの『P-ブロッ』サポートメンバーの小瀬さんに通訳としてお力をお借りしてのインタビュー(雑談?)です。

インタビューは、皆さんのお食事時に便乗して。森さんがメンバーに食べたいものを聞いてみたら「すし!てんぷら!」だそうです。「やっぱりそうなのー?」とこちらは納得するような意外なような…。お寿司やさんでお話を伺いました。

11/25 来日直後のメンバー

日本で楽しみにしていることを訊ねても、答えは食べること。「寿司、焼き鳥、焼肉、しゃぶしゃぶ…」
スウェーデンは、お魚食べそうな気がするけど?
「寿司バーは、たくさんある」
でも、森さんに言わせると、「やっぱり違う」とのこと。しめ鯖のようなお寿司が主流でマグロなどはないそうです。

先週はスウェーデンをツアーしてきたメンバー、なにしろ、8時間の時差に12時間のフライト、長旅でお疲れなんじゃないかと案じていましたが、待ち合わせ場所に三々五々現れるのは、元気で気さくな Hello! という声と笑顔。

初めてお目にかかる森さんと4人のメンバー。その時の印象と26日のライブでの印象が重なります。ドキドキがフレンドリーな笑顔と握手でほぐされて、わくわくした気持ちに変わります。どんな音楽を聴かせてくれるのだろうと楽しみに待っていた数カ月。そのドキドキも曲が始まればすぅーと引き込まれて「ここに座っているだけでしあわせ♪」な気分に。

「ああ、こういうことなのね」…スカンジナビアン・コネクションのライブに行こうとしている人にメッセージを。とお願いしたら、考えに考えた末にメンバーが口を揃えて言うのは「とにかくライブに足を運んで聴いて欲しい」「ライブを聴いてくれれば、それがメッセージ」「Love & Lesten !」「I Love you !」

1曲目が終わって店内を見渡せば、ほの暗い照明のなかに浮かび上がる客席の笑顔。すごーく暖かな雰囲気がトリオの音色にもシンクロして。今日、BODY & SOUL にいられることが心底、嬉しい。

次の曲は、サックスのトーマス・グスタフソンとボーカルのリーナ・ニーベリが加わってクウィンテットになります。

リーナ・ニーベリは、目がくりりんとした美人!お話している時も私の下手な英語に辛抱強く付き合ってくださって、何かとこちらに気を使ってくれて。森さんを「モリサン」と呼ぶ様子も「かわいー」。お話しているだけでファンになってしまっていたのですが、歌を聴いて更にその思いも強まります。

リーナ・ニーベリは、まず、可愛い。お顔も歌も歌いかたも可愛いのです。そして、ノーブルでいてコケティッシュ。26日のライブでは、前日に会った時と同じようなカジュアルな服でステージに立ちました。演出の必要のない実力があるのですね。音域が広くて、小鳥がさえずったり、サックスとユニゾンで歌ったり、ドラムとバトルしたり、声の表現力が抜群。

アクの強い人柄や、プロフィールが売り物ではなく、歌そのもので人を惹き付けられるのです。歌がうまいってこういう人を言うんだなぁ。そんなことを久し振りに思うほど、今、ちゃんと歌を聴かせてくれるシンガーっていませんよねぇ。

26日のライブの帰り道は、リーナ・ニーベリが素敵!という話題で盛り上がった友人と私。ポップスもジャズも含めて、私が今までに聴いた女性シンガーの宸Pがリーナ・ニーベリです。一緒にお寿司を食べた、という嬉しさを除いても…、やっぱり宸Pですね。女性がファンになってしまう女性ジャズ・シンガーってあまりいないように思うのですが、どうでしょう?

「美貌の女性ジャズ・シンガー」が持たせる虚像を思いっきり覆してくれたリーナ・ニーベリだけが今回の収穫ではありません。

森さんが「バイキング、バイキングした風貌」と言うトーマス・グスタフソンは、メンバー紹介レポートの写真にお髭が加わって、ちょっと厳つい取っつきにくそうな外見ですが、サックスがとても暖かい。サックスはビ・バップ風のちゃきちゃきな音が好きなのですが、トーマス・グスタフソンのテクニックやパワーを超えた包容力のあるサックス、うーん、いいなぁ。ニーナ・ニーベリとデュエットする、人の歌声のようなやわらかな音色。

25日のトーマス・グスタフソンのお話では、北欧の人も日本人と同じようにあまり感情を外に表わさないんだそうです。でも、「ライブの時には、お客さんとコミュニケーションがとれるといいな、一緒に参加してくれるようなライブがいいね」と。「アーツ・カレンダー」の鈴木さんと意気投合して、いずれ親子の契りを結ぶとか?

ピアノのアンダーシュ・パーションは、トーマス・グスタフソンと、森さんがスウェーデンに行った当初に組んだ人。森さんのベースとのコンビネーション、リーナ・ニーベリとのデュオ、クウィンテットのなかで、キラキラとした音が聴こえてきます。グランドピアノの蓋の中から音符が溢れてくる、イラストに描いたら陳腐なんだけど本当にそんなふうに表現したくなるバッキングが魅力的。

お隣に座っていた時には、インタビュアーは私なのに「スウェーデンに来たことある?」とか「お酒が飲めないの?」といろいろ話し掛けてくれて…。周りの様子を見て、盛り上げようとしてくれる人柄がピアノの音に現れているかのようです。そして、トーマス・グスタフソン同様、典型的な北欧の顔立ちだそうで、スウェーデンに行ったばかりの森さんは「あ、そこにもアンダーシュが、ここにもトーマスが…」だったそうです。

ドラムのマグヌス・グラーン、25日の洗濯物を抱えての登場が印象的でした。気さくで構えたところのないドラムは、そんな人柄と同じなんとも言えない安心感を与えてくれます。ふーんわりとドラムに向かう姿が楽し気。気張ってカウントを取らなくても、マグヌス・グラーンのスティックがドラムに触れた瞬間から“音楽”の世界が広がっていく。

なんて暖かな時間、音楽…。お目にかかった時、別れ際の握手の暖かさが甦ってきます。前回、5月に行われたスカンジナビアン・コネクションのコンサートでは、ラ−シュ・ジャンソン(ピアノ)とアンダーシュ・シェルベリ(ドラム)が爽やかな夏を感じさせてくれました。今日11月のコンサートは秋から冬へと移っていく柔らかな陽射しと暖かな部屋での会話の楽しさが BODY & SOUL に満ちていました。

MCでの森さんの「スウェーデンの、ブルースに通じるメランコリックな、しかも美しいメロディーを感じてもらえたら」というメロディー、体にすーっと染み込んでいく優しさ、その音に包まれている幸せを堪能しました。

スカンジナビアン・コネクションを聴くために会社を休んで駆け付ける人などもいて、毎回の来日、コンサートで少しずつお客さんが増えていっているそうです。日本ではあまり名前が知られていなくても、来日するのはスウェーデンをはじめとして各国で評価が高く、信頼の厚いビッグ・ネームのミュージシャンです。とてもレベルの高いミュージシャンを連れてきて下さって、コンサートを聴かせてくれるのは、森泰人さんお一人の活動。東大や東工大の学生さんたちもお手伝いされていますが、もっともっと支援する手は必要でしょう。

25日のインタビュー、26日のライブ、メンバーをまとめて、お客さんとお話をしてと、とても忙しそうな森さんの様子をみていて、森さんのおっしゃる「掛け橋」がまだまだ日本側は細いことを痛感しました。森さんも今回のメンバーそれぞれも何枚もアルバムを出していますが、大手のCDショップでも手に入れることは不可能と言ってもいいほどです。スウェーデンのポップスが日本でヒットするとしても、アメリカやイギリス経由の情報ですよね。スカンジナビアン・コネクションのコンサートを行うために、日本のライブハウスに照会してもほとんど無視されてしまう状態だとか。メジャーな音楽が幼児化している日本では、これだけレベルの高くて気持ちのいいジャズを提供することを意気に感じる場を求めるのは無理なんでしょうか。

海外と日本に掛け橋を掛けたい人は、きっと森さんだけではないはず。そんな人たちの願いや努力が泡となってしまうことがありませんように。

夏から始まった森さんとのメール交換、私の中でそれが実ったこの日のコンサート。大きな収穫を音楽の神様に、インターネットの神様(?)に、そして誰よりも森泰人さんに、どうもありがとうございました。


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