Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》Scandinavian 2001 june
vol.79
Scandinavian Connection 2001 May-June
2001年6月2日
東京・南青山Body & Soul
早すぎるくらいの時間なのだけど、ついつい足早になってしまう。久し振りにBody&Soulのお店に入る。お客さんもまだ少ない。けれど、かなりハイテンションで、そこここのテーブルから「ワクワク」が湧き上がっている。
1年に2回ほどの「スカンジナビアン・コネクション」。去年も一昨年も、初夏の一番美しい季節にライブを聴かせてくれた。メンバーも同じピアノ:ラーシュ・ヤンソン、ドラム:アンダーシュ・シェルベリ、ベース:森泰人。ステージが始まる頃には立ち見も出るほどの満員。
3人がステージに揃って、いきなり曲が始まる。ピアノの音、ベースの音、ドラムの音が耳に届くと同時に、頭の中がふわっと白くなる。暗い部屋、カーテンをさぁっと引いたら、外ではもう夏が始まっていた。明るさに慣れるまでは眩しくて目をパチパチさせるような。このツアーの前半戦のライブを2週間前に聴いていたのだけど、その時とはまた違う音楽の美しさに圧倒される。
2曲目は「酒とバラの日々」スタンダードって珍しい。「酒」という言葉にラーシュ・ヤンソンが大喜び。「サケ!」と何度かさけぶ。「酒とバラ…」というと何やら退廃的なイメージを持ってしまうけど、この曲の酒はワインのこと。ラーシュはワイン・コレクターだとか。とても明るくファンキーな曲になる。アンダーシュの力強く、ストライク!なドラムの音が足元にお腹に響いて心地よい。この演奏を聴いたら「酒とバラの日々」とは訳さない。花に溢れた庭で、美味しい食事とワインとおしゃべりという雰囲気だもの。
新曲とお馴染みの曲を交え、1曲ごとに森さんが曲の紹介やメンバーのエピソードを話す。日本語はわからないだろうけど、ニコニコとそれを見ているアンダーシュと少しでも早く演奏したいラーシュ。「もう止めて、演奏しようよ」とばかりにジャン、ジャンとピアノを叩いて促す。苦笑いしながら、マイクを置く森さん。ベースを構えるやいなや、ピアノがもう歌い出す。アンダーシュはドラムとダンスを踊るように肩を揺すって叩いている。
森さんのベースの音は、底が知れないほど深く透明な水の中に、漂いながら沈んでいく。積もった音がソロ・プレイの終わり、演奏の終わりの拍手によってふわりと巻き上がり、また積もっていく。
横一列に並んだ3つの音は、縦に層ができたり、重力から開放されて、曲の持つ彩りによって不思議にくるくると位置を変えて聴こえてくる。
ラーシュのピアノは空を駆けるよう。音色という気流に乗って、あちらこちらの風景へと誘われる。ドラムのうしろから飛び出したりするようにいたずらっぽく、またふんわりとゆったりと、オーガンジーのリボンが舞うように。
「Giving Receiving」という曲で1stセットが締めくくられる。楽器の奏でる音が体の奥のほうの自分の弦を揺すり、新たな音が生れ出る。美しい、愛しいと思う感情が溢れ出るようで、胸が締め付けられる。ピアノとベースが静かに音を紡ぎ出す。それよりも、もっと密やかな音をドラムが響かせる。ドラムでこんなに静謐な音が出るなんて。。。幽かに空気を震わすだけで、遠くまで澄んだ音が染みとおっていく。パワフルなドラムも魅力的だけど、この静かなドラムを聴けたことが、ものすごい収穫だと思う。
ライブハウスにいる誰もが、3人の演奏を渇望して日々過ごしてきたのだという空気が溢れている。拍手をするたびに、終演が近づく。いつまでも聴いていたい、演奏していてもらいたい。演奏に溜息、終わってしまうことに、溜息。
2001年6月2日
南青山Body&Soulにて
「WADA Map」の扉へ
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