Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》The_Picturesque-House
Vol.77
演劇レポート
2001年4月14日、15日
東京・東向島◎現代美術製作所
墨堤の緑がかってしまった桜を眺めながら、電車に乗って墨田川を渡る。「例年通り」であれば、桜が満開のころだったかもしれないのに。東向島の駅から3分ほど歩くと、[美]マークの「現代美術製作所」。町工場の機械やら道具やらを全部とりはらい、ギャラリーに改装したところ。以前は、化粧品メーカーの工場が多くて、この辺りを歩くと石鹸の匂いがしたんだけど、今は普通の商店街と住宅。
ペンキで塗ったグレーの床と、真っ白い壁、中央に白い柱があるだけの空間。部屋の四隅に10数個ずつの客席。入り口近くの壁には、青いテープで描いた「家」(マークみたいな、どこかで見たような)。
開演を待つ15分ほどの時間、眺めるものが何もないくらい、さっぱりとしたギャラリーを見渡す。家具や建て具もなくて、 部屋の広さが計れないけど「このくらいの広さがあると、住むには充分かな」とか「ここに机を置いて」など「住むこと」をいろいろ思います。この時間は貴重。慌てて飛び込んだりすると、「トリのマーク」の呼吸ができなくて、ちょっと苦しかったり。たぶん、この「トリ」の呼吸は体にもいいんじゃないかと思います。
「この家に住んでいた人を知っています」というナレーション。
少女(=柳澤明子)が弾むように登場。チャップリンみたいに、リズムのある歩きかたで、それだけで観客は和んで笑顔に。少女は、青いテープを取り出して、「家」のマークの側の真っ白い壁に部屋を描きます。誰も訪ねてこないので、ドアを描きます。でも、まだ誰も来ない。ドアノブを描きます。それでも、まだ。「呼び鈴を描きます」とナレーションと同時に呼び鈴を描くけど、「でも、ノックをすればすむことです」と落とされてしまう。
さらにテーブル、そこにジュースのグラス。テープをペリペリと剥がせば、ジュースは飲み干されています。
ベッドを描き、読書しながら人待ち。暗いので電気スタンドを。でもなんか暗い。テープを壁の(本物の)コンセントまで伸ばして、点灯。
「なになに?なにができるの?」と、わくわくしながら青いテープがぴりっと伸ばされていくのを聞き、「おおぉ」と声にならない声と笑い声でそれを見る。
少女はやがて部屋を出て、次の壁に風景を描きます。砂漠を描き、言うこと聞かないラクダと旅して、雨に降られれば、テントを張って雨宿り。少女の旅は、動きに合わせて流れる音楽とシンクロします。雨宿りをしていると、「さかなおとこ」3人が現れて、ラクダを連れ去って(剥がして)しまいます。そして風景はだんだんと人工的になっていくようです。
3つめの壁まで旅をして、そこには町が生まれます。車が行き交い、工場が立ち並ぶ。。。そこでも誰かに会うことのできなかった少女は、部屋(会場)を出ていきます。観客も少女の後を追っていきます。
一列に並んでいくと、隣の建物と繋がった迷路のような廊下もテープで、なにやら描かれて洞窟の中の壁画のようです。行き着いた部屋には、天井も床も壁もすべての面にテープで賑やかに「足跡」が残されています。少女も誰もそこにはいないのに、楽しげにおしゃべりする声が聞こえてくるようで。
遺跡のなかに入ったような感覚でした。誰かが、確かにいたはずの場所、膨大な時間が熟成され、完結した空間がふんわりと浮かんでいるような。そこにいた人がどんな思いを持っていたのか、と哲学的なことよりも、どんな日常を送っていたのかを思うほうが、時間を飛び越えられるような気がします。
2001年4月14日
東京・東向島「現代美術製作所」にて。
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