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京都レポート 第一弾

「京都旅行一:東福寺」

9月の末、旅行会社のカウンター担当者いわく、「1年で1番のオフシーズン」の京都に行ってきました。とても久しぶりの京都でしたが、訪れた場所はいつも出掛けてしまうところばかり。3日間、京都にいたのに見てきたお寺は3つ。あとの時間はずっと食べていたような…。

京都駅からバスで20分、その後10分ほど歩いたところにある「東福寺」。鎌倉時代に創建された禅寺です。とても大きな伽藍は、京都的、というよりは鎌倉にありそうな雰囲気の力強いお寺。カエデに囲まれた深い渓谷と「通天橋」からの眺めが有名で、紅葉シーズンの様子は旅行雑誌やポスターで目にすることの多い構図です。誰もが声を上げてしまうほど、町中にこんな渓谷があったのかと吃驚してしまいます。新緑の季節もまた見事な眺めですが、夏の暑さが過ぎて一息つき、来るべき紅葉の舞台を迎えようとする木々の穏やかな緑も風情のあるものでした。

「東福寺」のもうひとつの見どころは、枯山水の禅院庭園。京都で名園と言えば、「夢窓国師作、小堀遠州作と伝えられる」などが多いのですが、「東福寺」の庭は、昭和14年の作。鎌倉時代創建のお寺ではあっても大変に新しい時代の作です。作者は重森三玲氏。今の東京芸大で美術を学んだ人で、作庭家としては異色の人かも知れません。大方丈を囲む4つの庭は、それぞれに表現していることは違いますが、重森氏の個性が現れています。メリハリがあり、リズムがあり、私はいつも音楽を聴いているような気分で、東福寺の庭を見に行きます。

大方丈の正面の南の庭は枯山水で、よく見られる大海に浮かぶ島々(禅的・仏教的な意味もあり)が配されています。西の方には五山が苔の築山として置かれていますが、白砂の大海と苔の築山が斜めの線ではっきりと区切られているところが斬新。方丈の階に腰掛けて、枯山水の庭に対峙しても「日当たりがよくて気持ちいいぞ!」くらいのことしか浮かばないのですが、渦をまく水や切り立った岩を眺めていると、雲に乗って海上を飛んでいるような気分になってきます。蟻のように小さくなった自分が冒険して、庭が全世界、宇宙のようにも感じられて、ひととき旅をしているようです。

重森氏ならでは、の庭は大方丈の西側と北側。西側はサツキと砂地が大きな市松模様を描いています。鮮やかで深い緑と砂のコントラストで、モダンとしか言いようのないものです。この庭は「井田の抽象表現である四季の色彩的効果が意図されてる」のだとか。

北側は私が一番好きな小さな庭。敷石と苔で作られた市松模様は、きっちりと区切られた部分から苔がグラデーションを描くように敷石を飲み込んで行き、やがて苔だけに。陽の当たりかたで屋根の影が市松の直線にシンクロして、明るいところと日陰のところでまた別の四角が生れてきます。初めてこの北の庭を見た時の感想は「すっげー、かっこいー!」という情けない感嘆の声でした。北側ということで「おまけ」のような一角に足を止めずに通り過ぎていく人も多いのが残念です。

東の庭は、大方丈のプロローグとエピローグ。白砂に古く白い柱石で北斗七星を象った静かな庭です。南の庭の大海が渡り廊下の下を通り、天空と繋がった形になっています。小さくて、本当に何気ない、ただ7つの石があるだけの、単純といえる構図の迫力、リズムは、思えば天然を模したもので、ありのままの姿のデザインの力には脱帽です。古材、余材を使ったオブジェはこの頃では普通ですが、昭和14年では、これもまた珍しいものだったのではないでしょうか(オブジェではなく、庭ですが)。入る時は南の枯山水に目を奪われて印象の薄い庭ですが、北の庭をしばらく眺め、立ち去り難い気持ちで東の庭を見ると、シンフォニーか叙事詩の世界に浸っていた気分が日常に戻っていくのを感じます。張りつめた弦を弾くような余韻を引きずりながら…。東福寺の庭の市松模様や大胆な背景のカットなど、琳派のデザインに通じる点が伝統も新しさも感じさせる部分かも知れません。

東福寺のエリアは泉涌寺と東福寺の塔頭がいくつかあるだけで、観光地化されてる場所ではなく不便ですが、北の庭みたさに何度も足を運んでいます。

大好きな庭にも係わらず、この東福寺の庭が重森三玲という人の作だと知ったのは、3年ほど前でしょうか。京都のお寺の庭は創建当時の古いものだと頭から思い込んでいて、拝観の時にいただくパンフレットに書いてあることも気付かずにいました。しかし、気になっているものの情報は向うのほうから飛び込んでくることが多く、立て続けにテレビなどで重森氏のことを知りました。他の重森氏作のお庭も見たいと思っていましたら、偶然というか幸運というか、今回の京都旅行の日程に合わせるかのように、重森氏が住み、手を入れた重森邸での展示のニュースが入ってきました。

「東福寺」:京都駅烏丸口から市バスで「東福寺」下車+徒歩10分。

      または、JR奈良線「東福寺」下車+徒歩15分。


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