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コンサート・レポート
1999年12月16日
東京・原宿アコスタジオ
WIM コンサート
「スカンジナビアン・コネクション」で帰国中のベーシスト森泰人さん出演のコンサートに行ってきた。ピアニスト ウォン・ウィン・ツァン氏とドラマー市原康氏とのジャズ・トリオ。98年11月と99年5月「スカンジナビアン・コネクション」で森さんが帰国のたびにレコーディングされたアルバムが99年9月に発売。その記念コンサート。
このトリオは20数年前「江夏健二(=ウォン・ウィン・ツァン氏)トリオ」として活動されていた3人の再結成トリオ。アルバムのタイトルは “WIM”-We In Music- そして3人の頭文字をとったものでもある。
インターネットで森さんにインタビューして、お目にかかれることが決まった時は地球も小さくなったものだ、なんて不遜にも思っていた。その森さんが日本に帰国したのが11月25日、お話をすることができて、翌日にはライブを聴いた。リーナ・ニーベリのヴォーカルに酔い、各地のツアーすべてに行ってしまおうかと真剣に考えた。それから20日経った12月16日、WIMのコンサート。
原宿・竹下通りの喧噪が途切れたあたりにある小さなスタジオ。竹下通りを歩くのは20年振り?そういえば、このトリオもそのくらいの年月を経て再結成だそうだ。コンクリートに靴音を響かせながら地下2階のスタジオへ。椅子が並んでいるだけの素っ気ない設え、ステージと客席との境目もなく、楽器が置かれている。森さんの使い込まれたベースが横たわっている。前触れもなく照明が落とされ、ウォンさんがカウントをとる。
アルバムでは、無限の広がりを感じた。宇宙から地球を眺めるような、手が届きそうで届かない遠近感。ところが、目の前の3人が奏でるジャズに、そんな印象が飛んでしまう。ガジュマルの木のようにいくつもに分かれた幹が綯われて1本の木となっている。太く力強い、そして明るくてポジティブなジャズ。宇宙から眺めなくても、手の届くところに美しいもの、慈しむものはたくさんある。
演出なんて何もない、100%生の音で、3人のミュージシャンが演奏しているだけ。それぞれのスタンスから伸びた幹は養分をたっぷりと吸い込んでいて、隣り合った枝葉とそれを交換しあっているようだ。
森さんは、WADA Map でご紹介してきたスウェーデン在住のベーシスト。ウォン・ウィン・ツァンさんはピアニスト、作編曲家で日本を代表するニューエイジ、ヒーリング・ミュージックの旗手。市原康さんは、日本のジャズ界でベテランのドラマー。東京音楽大学で教鞭をとり、そしてクリスチャンでもある。
市原さんの終始絶えることのなかった笑顔と、ウォンさんの森さん・市原さんを見守るような視線。ほんの一言、合図するだけで進むプログラム。それらがしばらくぶりの再結成の時差を消していくようだ。
静かなおしゃべりのようなジャズを聴きながら、森さんがスウェーデンに帰るまであと1週間と気付いて、急にかなしくなる。次に森さんのベースが聴けるのは、きっと半年後。こんなに素敵なベースを演奏する人に出会えた幸運を噛みしめ、その音を染み込ませようとする。音楽には、国境はない。時間も距離も同じステージにある。それはとても愛でたいことなのだけど、同時に自分の世界の狭さを痛感する。地球が小さいなんて、嘘。やはり大きい。ジョン・レノンではないけど、理想と現実のギャップを埋めようとすることが音楽やアートの原動力かも知れない、そんなことを思ってしまう。
ベースの力強く柔らかな音は、すぅっと耳に入ってくる。鼓動と同じくらい自然に。森さんの見た風景、感じた温度を、歩きながら、時にドライブしながら、語り聴かせてくれるような優しさ。弦に触れているだけのような森さんの指が出す音は、磨き込まれたガラスの向こうにある憧憬を見せてくれる。アメリカに傾かなかったジャズはこんなにも洗練されたフレーズなんだ。聴かせようとするトリッキーなところがない。気持ちよく空っぽにしてくれる。
スウェーデン・ジャズを聴き始めて感じる、この頃のアメリカナイズされたジャズの閉塞感は、私達が当たり前に持っている季節感がないからなのかな。春の曲、秋の曲…ということではなく、人間が生きていくことの根っこに必ずあるルーティンが無視されているような気がする。
だけど…。ヨーロッパもアメリカも日本も関係なく循環している空気が、音を伝えている事実。地球のサイズがどうのこうのなんて言ってる場合じゃない。この賑やかな街の地下のスタジオから珠玉の音を含んだ空気が世界中に散らばっていく。ガジュマルは、落ちた葉が水に流されて、離れた場所で葉から根を張り成長していくそうだ。きっと、森さんの落とした葉は、日本とスウェーデンと様々な場所で根を張るのだろう。それが大きな森になりますように…。
1999年12月16日
原宿アコスタジオにて
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このレポートに、「アメリカに傾かなかったジャズ」「アメリカナイズされたジャズ」という表現があります。
読んで下さったかたから、「アメリカ云々…」はあまりにも非論理的ではないかとご指摘を受けました。
ご指摘の通り。
ジャズはアメリカで誕生し、今も成長を続けているのですから、 傾くもなにもありません。
真意としては、「アメリカに傾いている日本の音楽市場が提供するジャズ」とそれが与える閉塞感、です。
おそらく、これらの表現に引っ掛かったかたも多かったことでしょう。それを思うと赤面ものです。
何事にも勉強不足です。皆さんからのご指摘を栄養にしたいと思っています。
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