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Vol.78
WIM-We In Music-

2001年4月20日
東京・お茶の水◎カザルスホール

Piano:ウォン ウィン ツァン
Drums:市原 康
ContraBass:森 泰人

クラシックの小ホールでのジャズってどんな感じになるんだろう?ホーンがずらりと並ぶビッグバンドでなく、ピアノトリオでのステージは、甘くリリカルになるか、寂しくなるか、してしまうんだろうか、と思いつつ席につく。天井が高く、パイプオルガンのあるホールは、木をふんだんに使っていて、作られてからだいぶ経つのに、若々しく清らかな印象がある。音楽を聴くことで木に新鮮な栄養が行き渡り、いつまでも生き続けているようだ。

Part1の1曲目は、CDで聴き慣れた曲。ベースとピアノのユニゾンでルーティンのベースラインが印象的で、ピアノとドラムの鋭さがドラマチックな曲が、ホールで聴くと全然ちがう。とても柔らかい。ドラムは石畳に響く靴音のように聴こえる。シンバルはハイヒールやタップシューズのように、スネアはワークブーツのように。 改めて曲名を見ると「Only A Step」。タップダンスの足元が頭に浮かんでくる。

ピアノはガラスのように繊細で澄み切った音が甘さ控えめで、日常の雑音から耳を浄化してくれるようだ。耳から入った音が喉を通り、胸の中をすぅっとさせてくれる。

ずっと聴いてる和泉さんのピアノの音は「水の音」だと常々思っているのだけど、それでいうとウォンさんは「金の音」。水金地火木って(陰陽五行?)、人の属性ってやっぱりあるのかなと思ってしまう。

2曲目の「Peace People」は、「泰平の、平和の人」ということで、森泰人さんの名前から付けられたタイトルだということ。続く「Unknown Children」もベースソロが深い曲。演奏中は、ほとんど目をぎゅっと閉じている森さんの目蓋に映っているのはどんな映像なのだろうと思う。森さんにはメールでインタビューというのをさせていただいたのだが、とりとめのない会話をただ聴いてみたいと思う。演奏をこうして聴いていることがそれに近いことで、音楽を聴くことで言葉ほど明確ではないけれど、言葉より深く持続性のあるものを受け取っている気がする。

どちらかというと、静かに大人っぽい雰囲気のPart1。休憩後のPart2は、ウォンさんはTシャツに着替え、市原さんは濃いピンクに黒(紺?)の大きな水玉のシャツにお揃いの靴下で登場。くだけた雰囲気になる。
「Summer Bay Blues」は、江夏健二という名前でピアノを弾いていたこともあるというウォンさんの名前にちなんだ曲。「Field Market」は、原と市で市原さんの名前ということで、3人の名前が揃ったことになる。

Part2は、インプロビゼーションも含め、すっきりと明るくノリのいい曲が並ぶ。ライブならではの即興性とかタイミングの楽しさが盛り上がる。こういう曲をゆったりした椅子に深く腰掛けて聴くのもいいなぁと思う。聴いている側にもほんの少しの緊張感があるとライブの時間の密度がすごく高くなる。

それにしても。スティックもブラシも使わずに手だけで演奏した曲、そして、この残響のいいホールで響くことも、こもることもなかったドラムの音がとても印象に残っている。1曲目で、「今日は市原さんのドラムに注目!」と思った。それでも、森さんのベースにも、どうしても耳を奪われてしまうのだけど。ずしりと重いようでいて、お腹の底に届く寸前でふんわりと比重を変えて体中に染み込んでいくような音。二人とも、前後の脈絡も何もなく、ただ「うまいなぁぁ」と思う。技術と気持ちと、どちらもとても洗練された「Body&Soul」が伝わってくる。

2001年4月21日
東京・お茶の水◎カザルスホールにて。


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