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コンサート・レポート
和泉宏隆グループ WISDOM
12月6日 東京・青山CAY
いつもの東京建物八重洲ホールでのマンスリーライブは、12月はお休み。
ピアノとウッド・ベース+ドラムというアコースティックな編成ではない、もうひとつの和泉さんの活動であるグループ WISDOM。
昨年の6月に、アコースティック・ピアノ、ドラム、フレットレスベース+女性ヴォーカルからスタートしたこのグループは、その後パーカッションが加わり、今回のライブでエレキギター、キーボード、男性コーラスが加わった。ソロ・ピアノも素敵だけど、ウッド・ベースとのデュオも素敵だけど、和泉節の本領発揮は、グループで、かも知れない。
ステージの中央にグランドピアノ、その周りをメンバーに囲まれる形で1曲目WISDOM が始まる。
「おはなしは、暗く、そして深い森からはじまります。」とリーフレットに書かれた和泉さんの言葉。
重く渾沌とした…太古の森で…ピアノに、ベース、ドラム…とエレメンツが重なっていく。それは、ダーウィンが生命の誕生を表現した「あたたかくて小さな水たまりの中に…光、熱、電気力など、あらゆるものが存在して科学的に蛋白質が形成され、それはたちまちもっと複雑な物質へと変わっていく」という言葉を思い出す。必要な要素が絶好のタイミングで揃わなければ生まれない宇宙の不思議な偶然。
深い森に差し込む月明かり。照らされた道を進む#2 Moon Goddess .月明かりで見えてくるのは、輪郭よりも圧倒的な広さの肥沃な大地。 T-SQUARE での和泉さんの演奏、曲を初めて聴いた時の印象が甦ってくる。音楽を全身で受け止めることの心地よさ、驚き。雨のように降ってくる、何かを育むかのように温かな音の粒子。
#3 Pier7 .11年前のソロ・アルバム“AMOSHE”に収録されている曲。一番和泉さんらしい曲のひとつだと思う。手のひらからこぼれ落ちるようなピアノの音。
何故だろう、和泉さんの曲は、どんな情景を表わしたものでも身体と同じ温度の温かさを感じる。続く#4の 11月の雨 .冷たいはずの雨、切なげなバラードなのだけど、傷ついたものを慈しむような温かさ。慈愛…? 以前、インタビューで、曲に限らずいろいろなものを作るのがお好きと伺った。和泉さんに、女性的な部分を感じはしないのだけれど、何かを生み出そうとする姿勢が「母性」に繋がるのだろうか。
ロマンチシズムに溢れた楽曲、演奏が続く。ステージ上のミュージシャンたちのゆったりとして、朗らかな表情にも酔う。ライブを聴き、見て、来てよかったなと思う瞬間。
そんな光景を目にしながらも、頭の中に浮かぶのは化学の授業で悩まされた分子モデル。和泉さんという核にベースの岡田治郎さん、ドラムの諸藤一平さん、ヴォーカルの熊谷知子さん…と手を繋ぎ、ひとつの宇宙を作っている。パーカッションの山本恭久さんが加わり、さらにギター山口孝弘さん、キーボード林良さん、コーラス佐藤栄一さん、と集まるべくして集まった分子たち。
ライブ後の友人たちとの会話に T-SQUARE 時代の和泉さんのことが出てくる。それぞれが自分がハマったコンサートのステージを語り合ったりした。昔ほどの勢いのなくなったフュージョンというスタイル。多様性と融合性が魅力であったはずのそれが音楽の多様性に追い付かなくなった皮肉な道を今、辿っていると思うのだけど、WISDOMは、その迷路からうまく飛び出したように見える。和泉さんの音楽経験の融合、それを表現するのに適切な人材が集まったことで作意がなく、生み出された、または湧き出てきた音楽だという気がする。
先日、「森泰人スカンジナビアン・コネクション」で女性ヴォーカル リーナ・ニーベリがお気に入りになった。WISDOM の女性ヴォーカル 熊谷知子さんは、リーナとは別の魅力のある人。以前、聴いた和泉バンドでの彼女のレパートリーは、パット・メセニーなどのカヴァーだった。披露された「バクダット・カフェ」は、その後、つい映画のサントラを買ってしまったけど、「熊谷さんの声のほうが好き」という結果。今回のライブでは、ラフマニノフのヴォーカリーズと今までインストゥルメンタルで聴いていた和泉さんの曲に熊谷さんが詩をつけた曲、4曲を聴かせてくれた。さすがに音大で声楽を学んだというだけあって、声量も表情も豊かなアルト。
ただ、インストゥルメンタルの表現力や物語性、奥深さを和泉さんの音楽で知っただけに、そしてソロ・ピアノやデュオなどで染み込むほど聴いてイメージが出来上がってしまった旧曲を私は素直に聴けなかったことが残念。熊谷さんの歌声のための新曲を作って欲しいと切望。諸藤さんのドラムに負けないパワー、まっすぐに伸びやかな声がとても気持ちがいい。
12月6日 青山CAY にて。
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