Arts Calendar/Art's Report site/《WADA Map》fujicyaku

Vol.76
「水と油」公演
『不時着』

2001年3月16日〜18日
東京グローブ座

パントマイムと無言劇の中間に気持ちよくおさまる4人のパフォーマンス。
舞台の上に置かれた真四角のスペースに、天井からの照明でチェス盤のような市松模様が作られている。きちきちっと引かれたの線の心地よさと、その脇にきれいに並べられた椅子、流れるレトロで華やかな音楽、開演前の薄暗いセピアに満たされた客席、2階席、3階席の丸いバルコニー。。。美しいことの基準が50年ほど戻ったかのような上演前の劇場の雰囲気。

真っ暗になり、音楽が一瞬とまり、大きな音!…男が空から降ってきた。ここからは、50年前の美しさを現代のスピード感が、置いても置いても迫ってくるドミノ倒しのようにパフォーマンスが追い掛けてくる。

行くはずの所にいかれなかったのが不時着。そこから始まる「…はず」が裏切られ続ける断片が綴られる。
神の見えざる手が駒を動かすチェスのように、あっちにこっちにぽーん、ぽーんと運ばれてしまう人間。
突然のババ抜き真剣勝負。運命の出会い。コーヒーカップのロシアンルーレット。道を訊ねられて迷い込むラビリンス。

椅子とテーブルとドアとカードと、人間が目まぐるしく異動するパフォーマンスは、わずかな塵が命取りになる精密機械のように、精巧に動く。機械じゃなくて人間がやってるのがすごいんだけど。これ、CGで作ろうったって、絶対できない。ドアを出る、戻ってくると座ってた椅子があんなところにある、え?振り返ると今通ったドアがない。気のせい?テーブルに置いてあるカードを取る、電話の音のするほうを向く、テーブルを見る、ない、持ってたはずのカードと一緒にあーんなところに、混乱、混乱!でも、何も、誰もぶつからず。ものすごいスピードがぴたっと止まる。チェックメイト?誰もいなくなる。静寂。聞こえるような気がするのは砂嵐の音?

ぽーんと投げ出された場所は、砂漠。パイロット仲間がいる。何やら密談。そこへ電車ごっこのように輪にした長い紐を持った二人。あやとり。両手と首をうまく使って飛行機ができる。パイロット二人、前の翼と後ろの翼を持ってくる。あやとりと組み合わせて、飛行機のできあがり。その飛行はなんとも優雅で気持ちよさそう。飛行機を見上げて手を振る人がいる。乱気流に巻き込まれもする。

ヒッチコックやチャップリンのように、おしゃれな笑いの場面と、不時着したらこれほど不安な場所はないという砂漠や海をマイムで表現する場面。4人の筋肉はきっと緊張しっぱなし。観客は緩みっぱなし。それは緊張感がないんじゃなくて、リラックスできるリズムが舞台から流れてくるからだ。

2001年3月16日
東京グローブ座にて。


WADA Map」の扉へ

無断転載禁止 掲載:アーク編集室