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加藤健一事務所俳優教室公演「想稿銀河鉄道の夜」

加藤健一事務所 俳優教室夏のアトリエ公演

「想稿 銀河鉄道の夜」

8月30日(水)〜9月3日(日)

作:北村 想  演出:横山 利彦

出演:加藤健一事務所 俳優教室 13・14・15期生

役者の、タマゴさんたちの公演です。今年一番の暑さという日の昼。熱いこともまたさわやかなお芝居でした。銀河鉄道の切符のようなチケットが可愛い。

北村想作の「想稿 銀河鉄道の夜」。カンパネルラ、ジョバンニ、ザネリ…。若い登場人物たちの元気さが役者達の若さ、元気さと重なりあうのが気持ちのいい公演でした。俳優教室ってここまで「プロ」にしちゃうの?という驚き。大きな劇場で、あたりまえのように観客を動員する俳優たちの中には、自分を恥ずかしく思ってしまう人も大勢いるのではないかと、思いました。びっくりするほどの質の高さでした。

加藤健一事務所のアトリエ、その稽古場を黒幕で覆って、大道具もきっと普段使っているホワイトボードや机。そういう日常の中に、客席を作り、観客を入れて。客席がとても近くて、目線もあったりして、やりにくいだろうなぁ。なんていう心配は無用でした。まっすぐな目線に戸惑うのは、こっちでした。(観客と目を合わせたりはしないんですが)

場面ごとのメリハリがきいて、切り替えが綺麗でした。ひっそりと沈むように静かな場面に、舞台の上に何人もの役者がいてもうるさくなくて。 賑やかな場面は、それはもう元気に元気に楽しげに。ひとつ前のセリフまでは登場人物だったのが、一瞬のうちに背景に溶け込んでしまったり。演出のアイデア、意図がとても明確で場面のひとつ、ひとつが絵になり、決まってました。

何度も読んだ「銀河鉄道の夜」。原作の言葉使いに忠実な北村想の脚本。わかりきっているストーリー、展開。なのに、ボロボロと涙が溢れてきます。丁寧なセリフによって、改めて宮沢賢治の宗教感が波紋のように舞台に広がっていくのがわかります。暑さの中に清涼な空気の層が重なっていく。死に向い合った人たちの諦観。友達を死なせてしまったザネリの罪悪感。それを正当化しようと必死に、愚かなのはカンパネルラだったと喋る。少年の犯罪を憂う喧しい世間の声が一瞬、耳に甦ってきます。

半世紀以上まえの物語に(あるいはもっと昔の)感じるシンパシー。たぶん、変わったのは人間ではなく表現方法。少年にセラピーとして演劇に触れさせる、ということじゃなくて、人と話す方法に、いくつのバリエーションを与えられたかということじゃないかと思うのです。演じるにしても、観に行くにしても、言葉を交わさない隣の人と、舞台の上の役者と、空気を共有していることを感じられたら、それも会話ではないかと思うのです。

公演とあまり関係のないことばかり書いてしまうのは、演じるということは「自分」と「役」と「成長」の共同作業だ、と役者たちが見せてくれたからでしょうか。稽古を重ね、試行錯誤をくり返し、楽しいのと苦しいのとでぐちゃぐちゃになったでしょう。出来上がったのは、他の誰にも真似のできないカンパネルラであり、ジョバンニ…。ひとつのお芝居ができあがって、カーテンコールの誇らしげな表情にまた感極まったりして。

2000年9月2日。


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