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演劇レポート
2000年6月10日〜6月14日
東京・神楽坂 アユミギャラリー
「劇団トリのマーク〈通称〉」のHP ◎劇団
(トリのマーク)へ
http://www.bananawani.org/mountain/oec/tori/index.html
アユミギャラリーのHP ◎アユミギャラリーへ
http://www.bunny.co.jp/ayumi/index.html
トリのマークの公演を観に行くのも4回目となると、段々と楽しみかたの要領もわかってくる。いつも個性的で魅力的な場所での公演で、開演時間からがお芝居なのではなく、開場時間からが上演に含まれているよう。早めに神楽坂の駅に着いたのに、1年のうちに1日限りのような、ずっしりと湿った空気と涼やかな風のミスマッチに浮かれ、坂を散歩していたら開演ギリギリ。
神楽坂にあるアユミギャラリー。視界の開けたところと緑の濃いところとが同居する一角に建てられた洋館。「中に入ってみたい」憧れの洋館の誘惑。それをくすぐるように道路に面して大きな窓がある。上演中も道を行く人が覗き込んでいく。金魚と猫と小鳥が同居してるそうだ。ガラガラと音をたてるガラスと木の引き戸が入り口。
テーブルの上には、木のコップ。大きなコップに何も入っていなかったら、「あー」って言ったり、受話器のように耳をあててみたり、したくなるかも。誰かが話した言葉が、耳をあてたら、聴こえてくるかも。誰も見ていなかったら、思わず秘密を喋りたくなるかも…?訪れる人はコップに向かって話をして行く。
その家には、コップがあり、主人らしい男性(=山中正哉)と遊びに?手伝いに?くる元気な少女(=柳澤明子)がいる。二人の噛み合わないような、絶妙なトークバトルのようなおしゃべり。人間関係とか名前とか、説明されない。5W1H、それにこだわるなら、お芝居なんて観に行かないよねー。熊さん八っつぁんとご隠居、太郎冠者と次郎冠者、みたいに、今そこにいる人。手が届きそうな隣の世界の扉を開けてくれる人でさえあればいいんだなぁ。登場人物に名刺をもらったってつまらないもの。「むかし、むかし、あるところに」で充分納得してたんだもの。
窓から見える大きな木。濃くなった緑がもうひとつの窓のように、ギャラリーと町との境界線を引いているようだ。時折、小鳥のさえずり、猫の鳴き声のようなドアの軋む音。通りを行く人の話し声。耳に入ってくる音がすべて効果音のようにささやかに流れている。
観客が入り、舞台の出入り口になっている引き戸と、見えない位置のもうひとつの入り口と、ふたつの出入り口とで少しずれた時間がくり返されているみたい。
「こんにちは」と赤い服の女性(=丹保あずさ)がやってくる。人の姿がないので、奥に入っていく。ほどなく少女が戻ってくる。少女は、人がコップに向かって何を話しているのか知りたくてたまらない。好奇心いっぱい。
家の奥へ入って行った人が、引き戸からまた入ってきたり、しばらく時が経ってから、同じように「こんにちは」という声が奥のほうから聞こえてきたりする。
聞かれないように少女を遠ざけて、コップに向かって話をする。女性は、1枚だけ絵が描いてあるスケッチブックを持っている。宮殿の絵。その宮殿を探しに?窓の向こうのずっと遠くの湖へ行くと言う。
そして、丘の上に1本だけ立っていた大きな木の話。誰もいないとき、風のないとき、夜じゃなくて、雨が降っていなくて、そんなときに木に耳をつけると聞こえる「こぽこぽこぽ」という音。窓の外の、あの木のこと?それともコップになったの?
ストーリーというには小さなエピソードの断片。気に入った絵、写真を見ながら、頭の中に一瞬わき起こる物語。どんな人が住んでいたのだろう。どんな物語がある場所なのだろう。人影が、見えたような気がして、通りかかるたびに物語を想像してしまう生きている建物。物語と建物が互いに呼び合って生れる時間。
梅雨時に上演される「木陰で話をするときは」は、晴れの日バージョンと雨の日バージョン、更に昼と夜の違いも用意されているそう。すべてのお話を見てみたい、というより、そこに住んでしまいたい。「さかなおとこ」みたいだけど。
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無断転載禁止 掲載:アーク編集室