Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》YONDEN_kitchen_concert*95

vol.53

'02. 5.25.  
よんでん キッチン コンサート vol.95 
「アンデスの響き 南米フォルクローレのたのしみ」
      
会場:ヨンデンプラザ高知

 前回のアイルランド音楽は聴き逃したが、このキッチンコンサートでは、普段あまり聴く機会の得られない民族音楽をよくやっているのだろうか。しかも、どちらも地元高知にゆかりのある演奏家によるコンサートで、地域の活動に対する目くばせが利いていて大したものだ。今回のメンバーでは、ケーナ、サンポーニャ、オカリナを演奏した大目真壱が、高知でオカリナとケーナの教室を開いて、東京と高知を中心に活動しているとのことだ。ロビーコンサートとして、非常に親しみの持てる距離で、ベテランの名手、寺澤むつみ(ギター)やTOYO草薙(チャランゴ)に加え、華ある女性パーカッショニスト太田みちこ(ボンボ・ヴォーカル)という明るく楽しいメンバーでの演奏を聴かせてくれた。

 南米フォルクローレなどというと、本当に滅多に聴いたことがないような気がするのだが、思いの外、聞き覚えのある曲が多くて却って驚いた。「コンドルは飛んでゆく」「コーヒールンバ」「花祭り」などは、確かに何度も聴いたことがある曲だ。でも、どこかしら響きが違っているように感じられたのは、なぜなんだろう。使っている楽器が少し違うのかもしれない。編成のせいもあるかもしれないが、素朴な感じがとてもよくて、聞き覚えのあるものよりも、もっと、いかにもフォルクローレ的な印象が強くて、実にいい感じだ。

 楽器は見た目も珍しく、面白い。チャランゴという小さなギターというか、マンドリンというか、奇妙で固く弾きにくそうな楽器は、アルマジロの甲羅を胴の部分に使っているのだそうだ。草薙の話によれば、これは不思議な楽器で、演奏しているとどういうわけか甲羅を覆っている毛が伸びてくるのだそうだ。俄かには信じがたい話だが、あながち冗談とも思えぬ念の入った説明ぶりが、妙に楽しかった。ケーナの大半は、大目の自作だと言う。ステージでの話し振りにも、演奏にも、メンバー全員が、いかにも心底“アンデスの響き”を愛している風情が漂っていて、とても気持ちがよく、羨ましいような嬉しいような昂ぶりを誘ってくれる。最年長とおぼしき寺澤の余裕と奥行を感じさせる笑顔には、日本では決してメジャーとは言えない音楽を長らく続けていた積み重ねが南米フォルクローレを愛する自分の気持ちに揺るぎのなさを築き上げているような滋味がある。好きになった音楽が、経済的に恵まれたものを決して保証はしないジャンルであり、それゆえに一筋に貫くのは困難であればこそ、育まれたものだろうという気がする。楽器の響きの素朴さも、洗練されないがゆえの温かみや哀しみをしんみりと伝えてきて、心に響いてくる。音楽とステージ規模とが実にマッチしていて、素敵なコンサートだった。

 それにしても、高知なんかでこういう活動をしている人がいるとは思いがけなかった。「よんでんキッチンコンサート」が、こういう地域に根ざした活動の発掘と紹介の場になっているのは、とても素晴らしいことだと思う。こういう企画や紹介活動は、文化行政や公設の芸術文化振興財団のようなところが担うべき分野の一つだと思うが、そういったところが地域性よりは東京なり世界志向が強い高知の状況にあっては、ささやかながらも「よんでんキッチンコンサート」は、なおさら貴重で意義深い活動だという気がする。


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