Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》Disney On Ice『Beauty And The Beast』

vol.78
'03.10.21.
氷の上のミュージカル Disney On Ice『Beauty And The Beast』  
会場:春野運動公園体育館

 ディズニー映画のほうは十一年前に観たのだが、そのとき最も印象深かったのは、英語という言葉の持つ響きの美しさだった。古典的作品と違ってニューシネマ以降のアメリカ映画のなかの英語は、それを喋れない僕などが聞いても判るくらい、言葉自体も発語の響きも汚さに傾き過ぎのきらいがあるから、余計に際立ったのだと思う。スケートリンクに再現された『美女と野獣』が思っていた以上に忠実に映画のイメージを現出していたものだから、日本語への吹き替えでその良さが失われていることに思い及んだのだが、ファミリー向け公演だし、吹き替え音声を流すほうがもちろん妥当なんだろう。大いに感心したのは、日本語音声なのに、演じ手の外国人の表情豊かな口パクが、結構うまく合っていたことだ。正面アリーナ席の前から6列目左中程という好席で観覧できたお陰で、そんなことに気づいた。面白いのは、というか当然のことなのだが、吹き替え版のTVなどでは、吹き替える日本人たちが合わせているものが、今回は外国人が日本語に合わせているわけで、そういう形での吹き替えを観るのは初めてのことで、どこか新鮮で奇妙な感じに見舞われた。それくらい一方的な形での吹き替えしか知らずに来ているということだ。

 ミュージカルとしては、生唄・生演奏でない物足りなさが残って然るべきなのだが、それが氷上で演じられると、フィギア・スケート競技でTV観戦しなれているスタイルからなんだろう、違和感もなければ物足りないとも思わないところが不思議なものだ。競技大会では決して観られないモブシーンがたくさんあって、その集団スケーティングの動きの変化を見せる構成が言わば目玉のひとつでもあるわけだが、流れるように変化する隊列の動きの滑らかさと速さは、アイススケートならではのものだ。披露されるジャンプやスピン、リフティングなどは競技大会で目にするもののほうがハイレベルだが、造形や構成の妙では、こちらが上回る。そして、TV観戦では味わえない立体感と奥行感が臨場感として嬉しいものだった。大技の度に観衆から「おぉ〜」というどよめきが出るのは、そのためばかりでもなく、多くの観衆が普段はTV観戦でもフィギア・スケートをあまり観ていないからだろうという気もしたが、種々のかぶり物をまとうと重心が変わって滑りにくそうなのに、そのことを全く意識させないスケーティングは見事だった。加えて素晴らしいのが衣装だ。特に奥深い森の木々や狼の衣装、踊るディナーテーブルや食器の衣装が僕の目を惹いた。場面転換の巧さも目に付いた。スモークを使ったり、リンク前面やコーナースタンドでの演技に注目させているうちに背景転換をしたり、道具出しを行う。背景処理もより奥行感を高めるようなセットが多用されていた。

 それにしても、女性演技者が揃いも揃って美形・美脚だった。スケート靴を履いているので、よりスタイルのよさが強調されるのは、フィギア・スケートの特権だが、競技大会と違ってレオタードではなくスカートをまとっているから、スピンやらスリットスカートやらで美脚を拝めるときのありがたみが倍加する。競技スケーターの筋肉の塊のような腿と違って、程良く脂が乗っている感じが尚よろしい。主人公のやさしい娘ベルが最初のほうでソロ・フューチャーされたとき、ロングスカートの部分を剥ぎ取って、ミニスカートでリンク狭しと伸びやかなスケーティングを披露してくれたが、ロングスカートを剥ぎ取ったのは、このとき限りだった。

 一緒に観に行った高2の娘は、ディズニーアニメの『美女と野獣』のファンらしいのだが、彼女の話によると、映画の場面を巧みに繋ぎ合わせた構成だったようだ。それならば、流れていた音楽や音声も映画の吹き替え版をそのまま編集し直したものなのかもしれない。


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