Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》YONDEN concert 102
バンジョーは、高校時分にカントリーミュージックに魅せられたことのある僕が大学になって楽器屋を覗いたこともある楽器だ。初めて生音を聴いたときには、そのコロンコロンと転がるような響きやバシャバシャと沸き立つような響きの心地好さと思いがけないほどの音の大きさに驚いた覚えがある。今回のうたうバンジョー弾きとの触れ込みの永生元伸は、一昨年のクリスマス・スペシャルで公演したデキシーキングスの一員として、僕にも覚えのある演奏家だ。実に優しく柔らかい声が印象深かったから、今回の触れ込みを見て、やはり歌うという部分に自負があるのかなとも思った。
チューバとのデュオ・スタイルというのは、かなり珍しいものではないかと思うが、デキシーキングスでの薗田裕司氏の高齢とは対照的な若々しさが印象的な井桁賢一が随行してきていた。オープニングは、バンジョーのソロによる“フォスター・メドレー”で、スワニー河・ケンタッキーの我が家・おおスザンナ・草競馬という馴染み深いメロディでのバンジョーらしさを押し出す導入で、次にはイタリア民謡の“フニクリ・フニクラ”、近年大化けの“大きな古時計”をチューバとの合奏で披露し、親しみやすい形でバンジョーの意外に幅広い楽しみ方を提示していた。続いて、合奏に歌を添えての演奏で、バンジョーの響きがよく知られた“ワシントン広場の夜は更けて”と子供の聴衆への配慮を窺わせた選曲の“ミッキーマウスのマーチ”、そして、チューバが引いてバンジョーの弾き語りによるSMAPの“世界に一つだけの花”と、いかにもこの「キッチン コンサート」という場にふさわしい、幅広い親しみやすさを最優先する配慮を施したプログラム構成だと感じた。
楽器演奏としての聴かせ処は、次のバンジョー・ソロ“京都慕情”であり、チューバ・ソロ“子象の行進”であった。これで聴く側としてのポテンシャルをあげてもらったせいか、続く“ドナウ河のさざなみ”では、チューバをメインにバンジョーが伴奏する演奏に宿った、明るい哀感とでもいうような響きがクストリッツァの映画を思い起こさせてくれた。続いて、歌を加えた“幸福の黄色いリボン”は、三十年ほど前になる高校時分に「日立ミュージック・イン・ハイフォニック」という夜のラジオ番組で訳詞をドラマティックな語りで聴いたときのことを今でもよく覚えている曲で、永生元伸の歌声が実にいい感じだった。
ここでキッチンコンサートの企画担当者でもある地元のフルート演奏家の安藤千織さんを加えて、“星に願いを”の演奏となったが、一昨年のデキシーキングスの演奏会のときも同じ曲を演奏したけれど、そのときよりもフルートの響きに伸びやかさが感じられ、いい演奏だったような気がする。また、楽曲自体が今日のプログラムに馴染んでいたようにも思った。再びデュオに戻ってベンチャーズの“キャラバン”、歌を添えての“世界は日の出を待っている”でプログラムを終えた。
アンコールは、津軽三味線を意識したオリジナル曲のソロ、そして、歌と共にデュオで演奏された“明日があるさ”“聖者の行進”だったのだが、バンジョー演奏にありがちな速弾きを見せたり、インストゥルメンタルで圧倒するような演奏が全くなく、親しみのある楽曲を連ねて、楽しく気持ちのいいひとときをというコンセプトに徹していた。それが少々物足りなくもある一方で、こういう場には、やはりふさわしいのかもしれないと思ったりした。
「ヤマさんのライブ備忘録」の扉へ
無断転載禁止 掲載:アーク編集室