Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》YONDEN concert 107

vol.85

'04. 9.18.  
よんでん キッチン コンサート vol.107 
アルパとギターの調べ〜きらめきのパラグアイハープ「アルパ」〜
会場:ヨンデンプラザ高知

 アルパというのは、弦の数が約36本で半音弦のないハープだそうだ。オーケストラなんかで見るものよりは小型で、明紫色のレースの民族衣装をまとった奏者の増永雅子が椅子に腰掛け、少し抱えるようにして前後に揺らせながら演奏するさまが、その奏でる響き共々なかなか優雅で、民族楽器らしからぬ風情だった。揺らすことで基底部を覗かせる具合を変えて、響きの加減に微妙に変化を加えるものなのかもしれないが、当日の演奏では、そこから音採りをして小型スピーカーに繋いでもいたので、揺れによる響きの加減というものが仮にあったとしても、ほとんど捕捉できなかったように思う。コンサート用に設えられた会場ではなく、よんでんの電化キッチンのショールームなのだから、小さな空間でも致し方のない措置だったのだろう。

 最初に紹介された曲は“ヴィーノ・ブランコ(白ワイン)”という題だそうだが、ギターが時折ヘンな響き方をしたり、二つの弦楽器がうまく調和していないようなところが感じられ、少々先が危ぶまれたのだけれど、二曲目の“アマポーラ〜日曜はダメよ”のメドレーは、ギター奏者の山田恵範の編曲の巧さも手伝って、とても気持ちよく聴けた。二つの弦楽器の響きが調和するとしないで、こんなに違うのか、と前曲と比較して、大袈裟に言うなら少々鮮烈さを覚えるほどに違う印象を与えられ、音楽というもののデリカシーに触れたような気がした。ギターのボディをノックするアクセントも効いていて、素敵な演奏だった。三曲目はメキシコの“ラ・ヴィキーナ”と紹介されたが、アルパで半音を出すときに使うジャベという鈎を多用する曲とのことだ。なるほど左指にはめたジャベで頻繁に弦の上部を押さえていた。だが、その所作が手の甲を頬のすぐそばに近づける形になるからか、せわしさよりも可愛らしく優雅に映るところがいい。四曲目は、前回のミニコンサートの備忘録に「キッチンコンサートの聴衆は、いつも圧倒的に中高年女性たちなのだから、これを外す手はないというところだろう」とも記した、今をときめく韓国ドラマ『冬のソナタ』から。今度は“マイ・メロディ”ではなく、“はじめから今まで”。MCを務める山田自ら、今これをやらない手はないとの付言があって会場の笑いをとっていた。五曲目は、山田によると、ただ星つながりというだけで強引に繋いだとの“星に願いを〜見上げてごらん夜の星を”のメドレー。六曲目は、パラグアイの“ジガーナ(到着)”で、この日の演奏では、プログラムの最後に演奏した“鐘つき鳥”と並んで、僕が最も魅せられた演奏だった。

 明るく軽快な曲で、独特の味わいがあった。増永の後からの話によると、この南米ポルカという独特のリズムを習得している演奏者が、日本にはほとんどおらず、山田と組むことになったのも、このポルカがやれるという発見によるものだったとのこと。山田は、大阪を足場としているだけあってMCが楽しく、編曲のセンスやノリのよさに魅力があるものの、指の押さえが少し甘いのか音の切れがよくない気がしていたのだが、そういう事情があったのかと得心がいった。七曲目の“コンドルは飛んでゆく”の後、八曲目の“禁じられた遊び”はギター・ソロで増永が席を外したが、すぐに戻って九曲目が、映画『千と千尋の神隠し』より“いつも何度も”。そして、十曲目の“浜辺の歌〜夏の思い出”へと続いた。

 映画音楽や日本の歌など幅広い選曲が親しみやすさと楽しさを広げてくれて、このミニ・コンサートの趣旨からはそれが適切なのかもしれないが、山田にしても増永にしても、南米フォルクローレを中心に位置づけて音楽活動をしているのだから、その本分を存分に聴かせてほしかったような気もする。十一曲目に演奏したパラグアイの“カスカーダ(滝)”の力強さと清澄さの印象深い演奏の随所で、曲名にふさわしい「水の湧き出、流れるイメージ」を豊かに感じさせてくれたり、最後の“鐘つき鳥”の開放感あふれる演奏のなかで、他の曲にはなかったアルパの響きをふんだんに聴かせてもらったりすると、なおのことフォルクローレばかりのプログラムのほうがよかったような気がした。演奏者もフォルクローレをやっているときのほうが明らかに
気持ちよさそうで、ノリもよかったように思う。

 アンコール曲は、当日来場の誰もが知っているように見受けられた“コーヒールンバ”で楽しく終わり、この日のコンサートのチラシにサブタイトル的に添えられた「♪♪アルパとギターで奏でる優雅で爽快なサウンド♪♪」との言葉どおりのコンサートに、充分満足して帰途についた。


ヤマさんのライブ備忘録」の扉へ

無断転載禁止 掲載:アーク編集室