Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》Theatre Lab


vol.111

'07. 4.28. 薫的座
演劇センター'90 第49回公演『もやしの唄』      

 ひところ通いつつも暫く遠ざかっていた演劇センター'90の公演に久しぶりに脚を
運んだ。薫的神社のなかにある座敷の小屋という場所にこだわり、ずっとここで公演
を続けてきたが、改築することになったそうで、秋の芝居がこの小屋での公演の最後
になるようだ。

 『もやしの唄』は、'67年生まれの作者による昭和レトロものだったが、2004年の
作品だそうだから、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の大ヒットの前年作品だ。この薫
的座で35年間芝居をしてきたと語っていた演出の帆足寿夫さんは演劇センター'90
の主宰者でもあるが、芝居の後で、もやし屋店主 恵五郎(谷山圭一郎)の息子カン
タが大学を卒業する最後の場面を昭和55,6年頃という想定で作ったと言っていた
ので、カンタは僕とちょうど同い年ということになる。

 本編は、その15年くらい前という感じだったから、昭和40年頃だ。確かに最も
変化の度合いの大きかった15年間なのかもしれない。昭和55年に「変わらなくて
もよかったのに」と呟いた恵五郎の義母とみ(帆足由美)の台詞が、この芝居の締め
くくりの言葉だったわけだが、昭和42年生まれの作者による台詞として思うと、
少々小癪な気がしないでもない。ちょうど一ヶ月前に49歳になった僕が大学を卒業
した昭和55年と言えば、今から言えば、四半世紀以上も前になるわけで、あれから
今に至る変化もまたかなりのものだと感じているだけに、ちょっと軽々しい感じがし
た。年寄りの常套句と言ってしまえばそれまでなのだが、現在と比較すれば、そう単
純に「変わらなくてもよかったのに」と呟く時点でもなかった気がしてならないわけ
だ。

 それはともかく、昭和40年頃のもやし屋を舞台にした芝居自体は、演技者の役へ
のはまり具合が心地よく、なかなかいいものだった。久々に観た演劇センター'90が
随分と達者になっていて、大いに感心させられた。変化の激しさを増しつつあった
“時代の空気としてのせわしさ”のようなものをきちんと舞台全体に仄かに宿らせつ
つ、人が共同で暮らすことの温かみを醸し出していたように思う。

 この日の出演者は、8人だったが、そのうち僕に覚えのあるのは、帆足由美、川島
敬三の二人しかいなくなっていた。当日もらったチラシにダブルキャストで掲載され
ていた山北美砂子、松田昭彦の名にも覚えがあるものの、新たなメンバーが加わり活
躍しているのは、こうした地元劇団としては実に大したことだと思う。今日の芝居で
は、とりわけ谷山圭一郎の発声と口調が恵五郎のキャラクターによく似合っていたよ
うに思う。ある種の開き直りを通り抜けた達観と覚悟のようなものを滲ませながら
も、清澄な軽やかさに至っていることを感じさせる彼の姿を巧みに映し出していて、
絶妙の味わいがあった。また、佐々木とみの老後の老け具合を演じた帆足由美には、
役者としての年季というものを感じさせられたように思う。



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