Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》0515


vol.129

'08. 5.15.  
音楽座ミュージカル『リトルプリンス』    
かるぽーと大ホール


 音楽座からのDMでかなり早くから知っていた公演だけれども、今ひとつ食指が動かなくて
観に行く予定をしていなかったが、公演当日の午前中に突如、高知公演の主催者からお招きい
ただけるとの知らせが入って観てきた。

 音楽座のミュージカルを観るのは、'95年の『シャボン玉とんだ 宇宙までとんだ』以来で
はないかと思う。ミュージカルと言えば、歌と踊りということになるが、'95年の公演のとき
もそうだったように音楽座のステージでは、歌よりも踊りに惹かれた。加えて今回は、テグ
ジュペリの『星の王子様』を原作にした作品だから、主題の一つでもある“想像力の大切さ”
を訴えるに相応しい、イマジネーション豊かな舞台装置の使い方がなかなか効いていたように
思う。舞台全体を覆う巨大な布が大きな効果をあげていたが、とりわけ開幕程なくして現れた
“砂漠の夜間飛行”の場面が鮮やかだった。星空の下、ちょうど飛行中の機体から見える砂漠
の光景が移り変わるような動きがステージ上で繰り広げられている感じを受けた。

 踊りでは、休憩を挟んだ二幕目を開けたヘビの踊りが見事だった。群舞は、緑のバオバブ、
青の星空、茶の砂嵐、赤の花々といった衣装による色彩イメージの対照が興味深く、特にバオ
バブと砂嵐が目を惹いた。
 ちょっと残念だったのは、巨大な布を吊り上げてキラキラ光を反射する足場を使って王子の
星の経巡りを見せている際に、背景の星空にスポットを浴びた足場が映り込んで少々興を削い
でいたことだ。

 サン=テグジュペリの『星の王子さま』は、何十年も前に読んでいるはずなのだが、いくら
想像力が大事だと言われても、これを見て「象を飲み込んだウワバミ」の絵だと想像するのは
無茶な話だと思い、なんだか言いがかりを付けられたような気分になったことを覚えているだ
けで、後はきれいさっぱり忘れていた。だから、想像力に乏しい僕などは、王子(野田久美子)
の存在や彼の話、キツネ(安中淳也)やヘビ(山合大輔)との対話は、飛行機事故で砂漠に墜落し
た飛行士(広田勇二)がいまわの際に見た夢の話だというファンタジーの欠片もない現実的な眼
差しで観ていたのだが、飛行士が「壊れた飛行機の修理箇所を見つけたようだね」と指摘され
る台詞を耳にしたとき、“墜落した飛行機”とは“壊れた心”を指していることにハタと気が
付いた。劇中でキツネが王子に教えていた“特別な存在”の素晴らしさの部分と呼応して、そ
のつらさから心を閉ざし忘れ消し去ろうとすることが心を壊していたことに思い至らせてくれ、
冒頭場面に繋がった。そして、冒頭場面との対照の効いたエンディングを気持ちよく味わうと
ともに、“いまわの際に見た夢”として眺め受け取ってきていたことを少々恥じた。なかなか
素敵な舞台だったように思う。


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無断転載禁止 掲載:アーク編集室