Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》5.28


vol.146

'09.5.28.
ピュアマリー公演『The Musical ステッピング・アウト』(高知市民劇場第278回例会)
県民文化ホール・オレンジ

 二十年近く前になるライザ・ミネリ主演の映画版作品を僕は観ていないが、なかなかの快作だった
ようだ。観てないのだから、それと比較しての話ではないのだが、僕にとっては、今回の公演は久々
のダメダメ・ステージだった。

 開始早々から気になったのが、歌と楽曲の音バランスの悪さで、音が強くて歌詞の聴き取れないと
ころが多くて苛立った。演奏(といってもバンド紹介がなかったからナマではなかったろうと思うの
だが)としても、ステージとうまく噛みあっておらず、楽曲のよさというものが全く伝わってこなかっ
た。

 この作品は、元々はストレートプレイだったものがミュージカル風に進化してきたものらしいが、
僕が思うに、ストレートプレイのなかでのダンスシーンなら、アマチュアのタップ教室での素人の下
手なダンスを繰り返し見せられても抵抗感が少なかろうが、ミュージカルと銘打って見せられると、
やはりダンスシーンに観応えがないと楽しめない。上手に滑らかに活き活きと踊ることで観応えを作
るのも決して簡単なことではないが、ぎこちなく躓きもたつきながら踊るダンス場面で観応えを作る
のは、よほど卓抜した技量の持ち主が揃わなければ、叶わないことだと思う。そういう意味から言え
ば、最後のダンスシーンを気持ちよく観せることはできても、それまでのダンスシーンを観応えのあ
るものにするほどの技量には至っていないキャストだったような気がする。いや、歌と比べて踊りの
ほうは、個々はけっこうよくやっていたように思うから、キャストというよりもアンサンブルと言っ
たほうがいいかもしれない。まさかとは思うが、もし仮に最後のダンスシーンの鮮やかさを演出する
ために、意図的にそれまでのダンスシーンを不満足なものに演出していたとすれば、些か下品な演出
法だという気がする。

 映画版は2時間を切っているのに、会場で渡された資料を見ると、舞台の上演時間は休憩15分を
含んで2時間45分となっている。生舞台だから、場面転換などに要する時間もあるし、映画のよう
に細かい時間編集はできないのだから、長くなるのは仕方がない面もあるのだが、最後のダンスシー
ンを楽しませてもらうためだけに2時間あまりも費やされるのであれば、レビューショーだけを観れ
ばいい話になってくる。
 そんなふうにも思えたのは、本来なら物語の背景に息づいてこないといけない登場人物たちの人生
が、僕にはうまく伝わってこなかったからだろう。とりわけ、メイヴィス(前田美波里)以下三人の女
性がコーラスで訴えていた「ダメな男に傷つけられ疎外されてもひたすら愛し引き摺られるのが“女
の愛”」などという代物が、滅法古めかしく映ってきたのがつらかった。

 また、ホントはそうとばかりも言えないはずだったように思うのに、印象としては、タップダンス
教室に通ってきている一人の男と七人の女、そして、教室を開いているメイヴィスとミセス・フレイ
ザー(榛名由梨)までもが、ダンス教室をツライ人生からの逃げ場隠れ家として過ごしている感じが強
くなっていたような気がした。そのこと自体がダメなのではなく、逃げ場としてのダンスが大切な救
いとしてよりも、むしろネガティヴな側面を醸し出す形になっていて、ダンス好きというよりダンス
を口実にしている感じを残していたことが、物語に深みを与える効果を発揮できていなかったところ
がダメなわけで、僕にとっては裏目に働いてきていたように思う。

 それにしても、前田美波里の体形の見事さは大したものだ。確か僕より10歳上だったように思う
から、還暦を越えたはずなのに、歌って踊る妊婦役をやっているのだから、恐れ入る。しかも、そこ
に違和感がなく、最初に登場したときの船乗り風の出で立ちにはアラサー世代と言ってもいいほどの
雰囲気があった。しかし、おそらくは寄る年波なのだろうが、右足の上がりがよくなかったように思
うし、長時間連続では踊れなくなっているような気がした。


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