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10.4.25
演劇センター'90 第54回公演『錦鯉』
薫的神社会館 新薫的座
演出を手がける座長の帆足寿夫さんによれば、土田英生作の芝居を取り上げるのは初めてながら、今後は少し追いかけてやってみたい注目の作家とのこと。今回の芝居は、近頃どうも僕の性に合わなくなってきたヤクザものだったので、他の演目も紹介してもらえるのはありがたい。
先代の指名によりサラリーマンから転進して組長を襲名し、「新しいヤクザの形をつくる」として赤星会を継いだ水野(岡村慎司)の志というものは、結局のところ、幼馴染の吉田(刈谷隆介)や先代の長男で若頭の赤星(下尾 仁)、赤星を「ぼん」と呼ぶ古参組員の坂口(谷山圭一郎)らに張り合うなかで“古いヤクザの形”へと自ら進むことに転じて潰えていた。そこに作り手の肯定感が窺われる筋立てになっていた部分に共感できなかったのだが、「感情で爪の先まで一杯にしたい」という生の実感への切望のストレートな表出には観る側の気持ちを退かせかねないものがあるなかで、僕のような五十歳を過ぎた年嵩の者が観ても眩しく懐かしく映ってくるものを宿した舞台を作り出しているようには感じた。それだけに、彼らが本来の人の好さを窺わせつつ、ヤクザらしさを装うために敢えて過剰に粋がって使い振舞っているヤクザ言葉や所作といったものの貧相が疎ましく感じられて仕方がなかった。
劇団員は、それぞれ活き活きと演じていて観応えがあったように思うし、とりわけ今回の公演がデビュー作との、香港からの留学生ホステスを演じた木村由季の明るくキュートな「はい」の返事と屈託のない笑顔には大いに魅せられた。次回公演での役どころが楽しみだ。
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