Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》12. 6.


vol.216

'13.12. 6.

アンサンブル・ベルリン ジャパン・ツァー2013
会場:県民文化ホール・グリーン

とても好い演奏会だった。何と言っても編曲と構成が素晴しかったように思う。  第1部の始まりは地元の高知ジュニアオーケストラとの共演によるレスピーギの『リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲』から“イタリアーナ”と“シチリアーナ”を演奏したのだが、早々の“イタリアーナ”でチェロのピチカートの響きの良さに聴き惚れ、ジュニアオケとの共演なのに思いのほか劇性豊かに“シチリアーナ”を演奏したことに驚かされた。

 小休憩の後、7人編成のアンサンブル・ベルリンによる演奏になってからは、モーツァルトの歌劇『コジ・ファン・トゥッテ 序曲 KV588』でオーボエ(クリストフ・ハルトマン)をフィーチャーし、ブルッフの『ロマンス ヘ長調 op.85』でヴィオラ(ヴァルター・クシュナー)、ファゴット(モル・ビロン)とオーボエの抜けた5人でのチャイコフスキーの『ノクターン 嬰ハ短調 op.19-4』でチェロ(クレメンス・ヴァイゲル)と、普段から地味な印象の強い楽器の音色を心ゆくまで堪能させてくれたように思う。地味なるがゆえの滋味に光を当てるような心優しい親密感に満ちた響きの心地よさに思わず笑みが零れてくるのを禁じ得なかった。
 2管を加えて第2ヴァイオリン(エヴァ=マリア・トマージ)とコントラバス(ウルリッヒ・ウォルフ)の抜けた5人編成でのモーツァルト『クラリネット、バセットホルンと弦楽のための五重奏曲 ヘ短調 KV Anh.90』は、クラリネットとバセットホルンをオーボエとファゴットのための編曲との断り書きを添えて、とても充実した演奏を聴かせてくれた。

 少し長めの二度目の休憩の後は、心優しい親密感とは打って変わって、7人編成とは思えない豊かさと格調の高さを感じさせてくれて流石だと思った。ロッシーニの歌劇『セミラーミデ 序曲』の導入部のチェロのざわめくような響きとピチカートに魅せられ、オーボエと第1ヴァイオリン(ルイス・フィリペ・コエーリョ)の協奏に心が浮き立った。続いてヴォークトの『ロッシーニの歌劇「セミラーミデ」の主題によるオーボエとファゴット二重奏曲(弦楽合奏付)』だったのだが、如何せん僕の素養では、その2曲の連関の妙味を味わうには至らず、響きを楽しむだけに留まっていた。
 この日のプログラムで僕が最も気に入った演奏は、この後のロッシーニの『弦楽のためのソナタ 第3番 ハ短調』だった。「2つのヴァイオリン、チェロとコントラバスのために」と添えられていた演奏は、とても品よく美しく、心洗われる気分だった。そして、プログラムの最後は、このグループ結成の発起人となったらしいクリストフ・ハルトマンのオーボエを前面に出した編曲によるパスクッリの『ナポリの思い出』の6人編成での演奏だった。

 アンコール曲は、ヴァルター・クシュナーの達者な日本語で「バッツィーニをやります」と紹介されたルイス・フィリペ・コエーリョが見事な技巧を見せつけてくれた『妖精の踊り』だった。ヴァイオリンの奏法のほぼ総てが矢継ぎ早に披露され、しかも美しく響いてくる見事さに瞠目した。再度のアンコールに対しては「イタリアの次はロシアに飛びます」ということで、チャイコフスキーの『レンスキーのアリア』。三度目のアンコールにも応えて「もうすぐクリスマスですね」と『きよしこの夜』を演奏して終えた。500席の小ホールでの珠玉のひと時だったように思う。これで2500円とは破格のコンサートだった。


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