Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》Jazz00
vol.28
'00.10. 8.
デイブ・リーブマン・カルテット
会場:佐川町立桜座
近頃はジャズといっても、やたら洗練されていたり、ソフトで気持ちよく聞けたり、といったものが、特にコンサートでは主流になっているのではないかという気がするが、デイブ・リーブマンのカルテットは、彼がマイルス・デイヴィスに見い出されたことを偲ばせる正統的なモダンジャズの演奏スタイルを今に引き継いでいることが、とても新鮮に聞こえた。かつて当たり前のようにしてあったジャズの激しさや攻撃性は、近頃あまり耳にすることがなくなっていたが、彼らの演奏は、それらを湛えたものでありながらも、やたらとパッショネイトなわけではない。安定したとても高い技巧水準で、クールというのでもなく、モダンジャズ的な、叫びにも似たようなフレージングを聞かせてくれたように思う。
一時間半足らず、途中休憩もなく連続して演奏されたプログラムは5曲。メンバーの作品から2曲演奏した後、デイブ・リーブマンの作品を演奏し、日本の楽曲から「赤とんぼ」、そして最後がコルトレーンだった。「赤とんぼ」もけっこう面白かったが、群を抜いていたのは、やはりコルトレーンの曲だ。耳に覚えがあるもののタイトルを思い出せないが、ネイティヴ・アメリカンの音楽に題材を得たものだったようだ。リーブマンの話からそんなふうに思った。冒頭のいかにも素朴な竪笛の響きの美しさに驚いたが、さらに驚いたのは、あんな素朴な楽器で激しいパッセージへと展開しても、いささかも音が乱れなかったことだ。シンプルなベースラインを一貫して刻みつつ、時折ギターやドラムに譲り渡しながら、頭の円運動を続けて演奏するトニー・マリノのウッドベースが、実によく効いていた。
この曲に限らず、最も目立っていたのは、ドラムスのマルコ・マルシンコだ。彼の叩くパワフルで張りのあるドラムスが前段で綴った演奏の全体的イメージを支えていたのだと思う。そのうえで、さまざまな演奏技巧を盛り込む芸達者なところを見せるとともに、実にセンスの良さを窺わせていた。概ねハード系の響きが中心になるなかで、バランスよくソフトな響きを演出していたのが、ギターのヴィック・ジューリスだ。エレキとアコースティックとを使い分けながら、セッション全体に柔らかな厚みを持たせていた。このカルテットが、ピアノではなくギターで編成された狙いも、そこにあるのだろう。
それにしても、久しぶりに耳にする激しさのある彼らのジャズは、気持ちのいいほろ酔い気分などでは決してなくて、アルコール度の強い酒を短時間にあおって酩酊したような音酔いの気分で、少し遠くなった若かりし頃を期せずして思い起こさせてくれる懐かしさがあった。
そうしたところへ持ってきたアンコール演奏のアントニオ・カルロス・ジョビンの楽曲は、メインのプログラムの演奏とはうって変わって、まるで度の強い酒に酔った頭を癒すかのような優しい演奏スタイルで、心憎いばかりの仕上げ方だ。この演奏をもって“フルコースきっちり終わりました”と言わんばかりに、すかさず会場の照明が明るくなったことに、不満どころか、むしろ納得のプログラム構成であった。たいしたものだ。
「ヤマさんのライブ備忘録」の扉へ
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