Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》Jazz at SAKURAZA98

vol.16
'98. 8.25.  
ゲイリー・バートン&小曽根 真 ジャズコンサートat桜座 
会場:佐川町立桜座ホール

 この五月に出来たばかりの新しいホールで、ゲイリー・バートンと小曽根真のデュオを楽しんだ。生のヴァイブラフォンは、十八年前に渡辺香津美グループのコンサートでゲストメンバーの演奏というのを聴いて以来ではないかと思う。誰だったのかは忘れてしまったが、記憶では四本のスティックをフルに使った圧倒的なテクニックで驚かされたように思う。

 今宵の演奏は、一言に要約すれば、貫禄のゲイリー・バートン&確かな才気の小曽根真といった感じだ。ゲイリーも勿論スティックは四本を常に構えているのだが、やたらと四本ともを使った派手な演奏を繰り広げたりはしない。“モンクス・ドリーム”で始まった第一部では最後の曲を除いて、音を出しているのは大半が二本のスティックで、ときおり効果的に三本ないし四本ともに働くといった感じだったが、柔らかく弾んだり、強く跳ね返ったり、音盤を押さえ付けるようにしたり、撫でるようにしたりといった奏法のヴァリエーションは実に豊かで、それに伴ってスティックのヘッドを青い毛糸で包んだ珠が美しい軌跡を描きながら動くのを目で楽しむうえでは、やはり四つの珠だからこその味わいがある。第一部の演奏は、ヴァイブもピアノも全般的にムーディーな美しさを湛えていて、コンサートホールでの演奏よりもどこかオシャレなクラブででも聴いていたいような、お酒を好まない僕でもグラスを手にしたくなる誘惑に満ちていた。事実、休憩時間に居合わせた友人からも期せずしてアルコールを所望する声が聞かれ、酒を好まない僕ですらそうなのだから無理もあるまいと至極納得した。

 第二部は、第一部とは異なり、コンサートホールでの演奏が似合うものが多かった。二曲目の小曽根作曲のバラード“オンリー・ウィ・ノウ”は、実に美しい曲で演奏のムーディーな美しさとは別に曲自体の美しさが際立っていた印象がある。これ以降は、全ての演奏が文句なしに充実していた。ムーディーな美しさ以上のアーティスティックな響きのなかで、激しさや強さ、凛々しさなども加わった見事な演奏が二人の息の合ったコンビネーションとして繰り広げられていたように思う。なかでも小曽根作曲の“弁当箱”やベニー・グッドマンの“オパス・ハーフ”は、ホットでスリリングなテンションの高さが実に心地の良い演奏であった。

 プログラムの最終曲がチック・コリアの“スペイン”という個人的にも懐かしさを覚える曲だったのは、漠とした予感はあったものの嬉しい驚きで、聴きながらついつい耳に覚えのあるクラッピングを入れたくなってくるような楽しい気分にさせられた。ちょうど僕がジャズと接する機会を割合熱心に持っていた頃に、鮮烈な新鮮さと圧倒的なテクニックや楽しさで爆発的に支持された名曲だ。アンコールの二曲も含め、チック・コリア、バド・パウエル、セロニアス・モンクと名だたるジャズメンそれもピアニストばかりが刻み込まれるエンディングの演奏会というなかで、小曽根真がいささかも霞んで見えたりしてこなかったのは、たいしたものだ。演奏曲目の合間に見せる小曽根の通訳と語りには巧まざるユーモアも窺えて、実に堂々たるものだった。 


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