Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》RICHIE_BEIRACH97
vol.6
'97. 10. 1.
「RICHIE BEIRACH piano solo」高知県立美術館ホール
ジャズソーセージが主催の「リッチー・バイラーク、ピアノ・ソロ演奏会」に出掛けた。ジャズのソロピアノは、一年前の菊池雅章「タッチ・オブ・ザ・キー」以来だ。
リッチー・バイラークのピアノは、激しいパッションとか華麗な才気で、強烈なインパクトをもたらしてくれるような類のジャズではない。かと言って、ムーディーでマイルドな心地好さに酔わせてくれるといったエンタテイメントでもない。とても丁寧で考え深く、よき意味でのアマチュアリズムを感じさせる誠実さとハート・ウォーミングな演奏で、聴衆を心地よく豊かな気分にしてくれ、決して職業的エンタテイメントに堕することのない上品なリリシズムを堪能させてくれる。太く短いように見える指で不器用そうに鍵盤のうえを往復しながらも、奏でる音は実に美しく軽やかで、眼が受け取るイメージと耳が受け取るイメージとの間のギャップには、マジカルな楽しさがあった。
この日のプログラムでは、一部の最後を飾った“エルム”と、今は亡き武満徹にインスパイアされたと教えられた“サークル・チェイン&ミラー”という二つのオリジナル曲が、特に印象深かった。“エルム”のリリカルで透明感のある美しさは、この日演奏された曲目のなかでも際立っていたように思うし、その前の前に演奏された4曲目のプログラム“サークル・チェイン&ミラー”には、知的で崇高な深みが感じられた。第二部では全曲通じて、非常に楽しく、くつろげて好感の持てる演奏が続いた。なかでもビル・エバンスの“ピースピース”では、左手がゆったりと刻むリズムの繰り返しのなかで、右手が軽快に華やかな音をヴァリエーション豊かに奏でる、音の対照と調和が絶妙で本当にいい気持ちになった。
美術館ホールは、とてもよく響くホールなので、楽器の種類や数が多すぎると少々辛いが、小さな編成やソロ演奏には、ぴったりだ。この夜もヤマハのCF−3(正しくはローマ数字の3=。)が、これまでにないくらい美しい音を出していた。特にピアノの右端の高いほうの音が、こんなふうに奇麗に響くのを聴くのは、久しぶりだというふうに感じた。以前と違って、コンサートから遠ざかっていたことを考え直す機会となりそうな気がして、嬉しいような、困ったような…。
「ヤマさんのライブ備忘録」の扉へ
無断転載禁止 掲載:アーク編集室