Arts Calendar/Art's Report site/《YAMAsan no Live_bibouroku》Vn_recital99
vol.19
'99. 7. 2.
ライナー・ホーネック ヴァイオリンリサイタル
会場:高知県立美術館ホール
ソリストとしての活動を中心にしている演奏家ではないから際立つ個性で魅了するといった類の演奏スタイルではないために、かえって驚異的な技術に裏打ちされた安定感と正確さが印象深かった。他の楽器に比べてもヴァイオリンの音の微妙さは特別で、ライヴ演奏なら一流のプロでも、ミスタッチやミスボウイング、あるいはミスとまでは言えなくても微妙なずれや揺れによる変な音が、多少はあって当たり前という感覚で聴くことに慣れているからだろうか、そんなことが起こりそうにもないように感じられる安定感には驚かされた。
とりわけ新鮮だったのは、これまでに観たことや音を聴いたことのある様々な演奏技法が、「そうか、こういうことのための奏法だったのか」と初めて得心がいくような響きでもって聴かせてもらったような気がしたことだ。ミスによる変な音ではなく、様々な音色を出すことで、ヴァイオリンにはこんな弾き方もあるのだということを教えてもらうことは珍しくもないことなのだが、それを音楽的な効果として納得できる響きで聞かせてもらえることは案外少なかったのだと思った。さして音楽に造詣が深いわけではなくて、演奏技法の名前も知らないし、CDなど全く聴かないライヴ専門のコンサート・ゴウアーだから、よけいにそう思うのかもしれないが、何とも新鮮だった。
今夜の演奏曲目は、第一部がシューベルト作曲「ロンド ロ短調 D.895 Op.70」で始まり、ベートーヴェン作曲「ヴァイオリン・ソナタ第7番 ハ短調
Op.30-2」。休憩の後、伴奏者小川典子のピアノ独奏でショパン作曲「スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31」を聴き、ブラームス作曲の「ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調
Op.108 」でプログラムを終えた。アンコールは、2曲の予定だったらしいが、3曲となり「R.シュトラウス/オペラ『薔薇の騎士』よりワルツ」「クライスラー/ロンディーノ」「山田耕筰/中国地方の子守歌」であった。
自分自身の年齢のせいか、近頃はソナタ曲だと第二楽章に惹かれることが多いのだが、今夜の演奏でもベートーヴェンの第二楽章のゆったりとした穏やかさのなかに、得も言われぬ豊かさがあって、何やら安心感のような気分をもたらしてくれて嬉しかった。特に最近、何かと不安感に悩まされて、動揺ばかりさせられたことが続いていたというのもあって、メンタル・リラクゼイションに大いに役立った。ブラームスの第二楽章では、ヴァイオリンの重音をこんなに綺麗な響きとして聴いたことがあったかと思うほどに気持ち良く聴けたことが印象に残っている。アンコール曲では技巧的に見せて聴衆を魅了したり、日本の子守歌を取り上げたりとサービス精神も豊かで楽しかった。ホーネックの演奏の驚くべき正確さには感心するほかないのだが、僕にとっては、とりわけデクレシェンドの響きの美しさが印象深い。
NTT ドコモのメセナコンサートは、一昨年の“澤カルテット”以来だが、演奏が充実していて嬉しい。ただ親子連れも多かった一昨年と違い、大半が大人の聴衆で、しかもこれだけの水準の演奏家を招いていたのだから、解説などなくてもよく、少しでも多く演奏を聞きたかった。せめて一演奏ごとに登場させずに控えさせてもよかったのではないかと思う。前回の演奏会ではうまくマッチングしていた解説が今回は欝陶しく感じられた。同じ解説者であっても、出演者や客層、会場の雰囲気などでこれだけ印象が変わるのだから、企画演出というのは難しいものだと改めて思った。
「ヤマさんのライブ備忘録」の扉へ
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