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【コラム】
しとしとと雨の降る日。「念のため」1日取った休暇は案の定、午前中の早いうちに用事が終わってしまって、どうしようかなぁという月曜日。ほとんどが休館だけど、いくつかの美術館は開いている。オープンしたての六本木の美術館もこの天気なら空いているかもと思ったけど、雨ならば、やっぱり、ここに行かなくては。東京都庭園美術館へ。
中に入ってしまえば雨は関係ないけれど、ここの雨の日の風情は格別。建物へと向かう木立の道の大木は、雨を一旦すべて飲み込んでしまう。だから、その木の下のアスファルトは他の場所よりも濡れていない。時によってはまったく濡れていないこともある。そして、枝の先から、雨粒よりも大きなドロップを滴らせる。針葉樹の指先から滴るその粒は、十分に濾過されているだろう。いちど、飲んでみたい気がする。
4月・5月は、木々がともかくもすべての葉っぱを枝に溢れさせ、太陽も水分も飲み込める限りを受け取ろうとしているようで、少し遠くから眺めれば、ブロッコリーやパセリのような緑の小山のように見える。その緑が生きている様子を見たくて、庭園美術館に行く。東京の四季が楽しめる庭園もその回りも、手を尽くしているようなほったらかしてあるような伸びやかな大木は、夜中に見たらかなり恐いと思う。怪物が吠えているように感じるだろう。悪夢のようなその姿に怯えることも、自然に畏敬の気持ちを持つ大切な儀式なのだと思う。
美術館の中では「モダン日本の里帰り-大正シック」という展覧会をやっている。私の大好きな美人画。描かれている装いは大正モダンの和服で、でも背景には自動車やソファなども配されて、アールデコの美術館で展示されるにふさわしいもの。展示室は朝香宮邸であった頃の家具などそのままに残されていて、美人画と建物と両方を存分に堪能。
雨の平日だったから、人出も少なくて、やはり今日ここに来てよかったと思う。部屋を巡る折り、歪んだガラスの向こうに雨の庭園の様子を見ることができる。薄紫の花房がわずかに覗く藤棚、俊敏そうな動物の置きものがある芝生。
美術館巡りをするぞ、と気合いを込めた日はそれなりの拵えで行く。そして、庭園美術館に入ると自分の不粋な靴にげんなりする。カタログを詰め込む想定の斜めがけの巨大なバッグも後悔する。この日は、他の用事を済ませた後だったので、ハイヒール。ここで暮らしたであろう佳人、美人画の令嬢に及ぶべくもないけれど、自己満足。
心残りは、一度座ったら優雅に立ち上がるなんて到底できない深いフカフカのソファで、お茶を飲みながら雨の庭園を眺めるのに、誰もいないカフェに踏み込む勇気がなかったこと。あまり空き過ぎもちょっと残念。
(207.4.23 WADA)
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