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会社帰りにひさびさに出た新刊小説を買いに、いつもと逆方向へ一駅。
目的の一冊だけを買うつもりが、ちょうどあちこちの出版社が「秋 の新刊」を出した直後だったらしく、未チェックの読みたい本の山々に目が爛々と輝いてしまう。
本屋さん用のエコバッグを持っていなかったので、3冊だけを厳選してほくほくしながら、帰り道に向かう。本屋さんのすぐそばの老舗珈琲店に心魅かれながらも、ここで寄り道しては後の長い道中がつらいからと断念して。
いつもの電車のホームについてみると事故。しばらく電車が動く気配はない。
頭に浮かんだのは、半月ほど前に買った小説に挟まれていたリーフレット。
「本を買ったら」とタイトルのついた版画があしらわれ、描かれているのは神田・神保町の名喫茶店。
「そうなんだよねぇ!」と笑顔になってしまう素晴らしいタイトルだった。
急ぐ帰り道ではなし、近くの喫茶店に寄って戦利品を眺めながらコーヒーとサンドイッチかケーキで晩ご飯代わりにしちゃってもいいかなぁとにやけてくる。
でも、この駅の近くに本を広げたい喫茶店はないんだよなぁ。好きな喫茶店はあるけれど、窓の外を眺めてぼんやりしたり、友達とおしゃべりする店ばかりで、一人で本に浸る店が思い浮かばない。
ブックカフェが一軒、思い当たるけど、その店とは違う袋から買ったばかりの本を出すのはどうだろう。そこの店員さんには、絶対に今日が発売日とばれてしまうだろう。
ならば、あっちの店。コーヒーも美味しいし、今時分なら夜景もきれいに見えそうだけど、そんなに遅くまでやってたかなぁ?
駅の中の_タバは、ソファ席に座れたらいいけど、ソファ以外の椅子は長居がつらい。まして、この事故のタイミングでは満席だろうなぁ。
あまたある喫茶店は、どこでもいいわけでなく、一緒にいる人や時間帯やいろんな条件で「あそこでなければ」というのを、なんとなく自分で決めてしまっているなぁ。
「本を買ったら」その「本に浸る」ために、帰り道の一歩前に喫茶店に寄りたくなる人は多いと思う。
好きな本屋の近くには、好きな喫茶店がある、というようなことを以前に書いた記憶もある。
本にまつわる喫茶店は二種類必要で、一つは本を読むために行く店。いま買った本ではなくて、何度か読んだ本がバッグに入っているのを確かめたうえで入る店。
こちらは、長居を許してくれる雰囲気、というか客をほっといてくれる・適度にざわざわしてて、店員さんの目があまり行き届いていない・こだわりのメニューがない店。というとチェーンのコーヒーショップがいいということになる。本当は、読むためというよりも他人だらけのざわついた空気に包まれに行くようなものかもしれない。
もう一つは、「本を買ったら」行く店。こちらの条件は厳しい。実際には本は読まない。挟んであるリーフレットをじっくりと読み、表紙を見てカバーを外して装丁のすみずみまで探って、目次とあとがきまでは読んでもいい。
うしろのほうの「既刊案内」も読む。本文以外の読むところをすべて読んで、バッグに大切にしまう。コーヒーの匂いや暖かさ、店の空気に誘われて、ここで読み終えられたら、と思うこともあるけれど、なぜか楽しみにしている本ほど、どんなに気分のいいところであっても、読まない。
家に帰り着いて、手も洗わずうがいもせず、着替えもしないで一刻も早く読み始めたいのに、すべてすっきり終えてからと自分に枷をつける。
ルーティンを終え、クッションを積み上げ、膝掛けを出して、お茶の用意をして。。。でも、ホントに待ってた新刊がもったいなくてまだ読み始められない。
あしたは雨の予報。それは読書籠りに格好の天気。ならば、きょうのうちに好きなお茶とお菓子も買っておいて、なーーーんにもすることがない雨だれだけの中で読むことにしたい。
(2008/11/24 WADA)
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